ルワンダはアフリカの奇跡とも呼ばれ、ICTを中心とした様々な分野で急速な発展を遂げているということが世界中で評価されているが、国民の生活を支えるヘルスケアの部分でも高い評価を受けている。
下図のように、WHOが示すUHC(Universal Health Coverage*)のサービスカバーインデックスは、年々サブサハランアフリカの平均値を超えて、上昇している。このインデックスは、必要不可欠な医療サービスのカバー率 (生殖、母体、新生児と子供の健康、感染症、非感染性疾患、およびサービスのキャパシティとアクセスを含むトレーサーの介入に基づく、一般的および最も不利な立場に置かれた人々の間での必要不可欠なサービスの平均的なカバー率)として定義されている。
ルワンダの国民皆保険とUHCの達成
ルワンダ国民の92%が国の健康保険制度の対象となっており、その保険システムは世界で最も成功しているものの1つとして知られている。
その健康保険の経費は、3分の2は保険加入者から、3分の1は国の予算から拠出されており、一人当たりの負担額は、最も貧しい市民は無料の健康保険を受ける権利があり、最も裕福な人は毎年成人1人あたり800ドルの保険料を支払うという仕組みになっている。
ルワンダの健康保険は、一般人の大半が加入するMutuelle de Santé、公務員が加入するRwandaise d’Assurance Maladie (RAMA)、軍関係者が加入するMilitary Medical Insurance (MMI)があり、多くのルワンダ国民がこれらいずれかの保険に加入している。特にMutuelle de Santéは、所得に応じてカテゴリーがA、B、C、D、Eに分けられて、所得の低いものでも、様々な医療が受けられる体制になっている。
この保険制度により、分娩は病院にて行われるようになったため、当国での乳児死亡率が著しく低下した。医療費の GDP 比は 5.34%、国民一人あたりの医療費支出は 49.5USD であり、これは世界平均(一人あたり948USD)の約5%である。
ルワンダは、官民合わせ、一次医療として 4.5 万人のコミュニティヘルスワーカー、476 の保健ポスト、499 の保健センター、二次医療として 36 の地区総合病院、三次医療として 11 の専門病院及びリファラル病院を有している。
コミュニティヘルスワーカーの成功
医療現場では、数少ない医師を生かせる優れた体制が構築されている。ルワンダでは、それぞれのコミュニティに、コミュニティヘルスワーカー(以下、CHW)を配備している。
コミュニティヘルスワーカー (community health workers:CHW)はプライマリ・ヘルス・ケアを医療者に代わって提供するために選任されるコミュニティのメンバーのことである。住民100~200人当たりに数人のCHWが対応し、次にナース主体の医療施設としてHealth Post(村)→ Health Center(地域)で手当の必要な住民に対応し、より高い医療が必要な際には、医師のいるDistrict Hospital(郡)→ 教育病院(大学病院、軍病院、キングファイサル病院)の順に紹介していく仕組みがある。
ルワンダCHWプログラムは、妊婦の教育・健康的な行動の促進・および医療サービスへのフォローアップと連携を通じて、母子の不可欠な臨床サービスの普及を促進することを目的として、1995年に設立された。中等症以上の病気や外傷を扱えるのは、教育病院だけ、地域の最前線では、CHWの果たす役割が大きく、マラリアや新型コロナウイルスへの対応では大きな成果をあげている。
各村には下記の通り3つのCHWがある。
- 幼児期の病気の基本的ケア(マラリア・下痢・栄養失調などの小児疾患の特定と治療など)
- 統合コミュニティケース管理(地域社会メンバーへの避妊薬の提供など)
- 母体の健康管理(妊産婦・授乳中の母親・出産前・出産後・出産時の援助などを対象とする)
上記の活動は、1.2.はbinômesと呼ばれる男女のCHWペアによって実施され、3.は女性のCHWが担当となり活動している。
ルワンダには、CHWが所属する地域医療センター、地域医療センターからの紹介を受ける地区病院、三次病院の3層の医療システムがあります。まず、何かしらの医療的ケアを求める人はCHWに最初に相談する。その後、CHWの判断により、必要に応じて地域医療センターにかかる。地域医療センターで対応できない場合は、地区病院、必要に応じて三次病院に紹介されるというシステムである。
CHWの村ごとの配置の徹底や、医療施設と効果的に結び付ける方法などが功をなし、実際にルワンダの平均寿命はアフリカ大陸内でのトップの数値を示すようになった。1995年には31歳であったルワンダの平均寿命であったが、2018年には69歳にまで伸び、また、2000年には出生10万人あたり1,160人であった妊産婦死亡率は、2017年には10万人あたり248人と大幅に減少した。このように良い結果となったのは、一つの要因として、コミュニティ単位でのCHWの活動によるものであるといわれている。
医療分野でのルワンダへの投資機会
ルワンダでは、上記に挙げたように、平均寿命が大幅に伸びており、高度な医療のニーズが高まっている。
楽天株式会社とJICAで、ブロックチェーン技術と AI 診断・モバイル診療サービスを活用した P2Pマイクロ保険事業案件化調査も実施されている。調査では、ルワンダ住民に対し、ブロックチェーン技術の活用や AI 診断・モバイル診療サービスとの連携等を通じた P2P マイクロ保険(同じ属性を持つ集団で掛け金を拠出し、医療費等が発生した場合に拠出金から支給)の提供を行い、医療サービスへのアクセス向上を目指すビジネスモデルを提案している。
本提案では、中間層向けの医療保険サービスに対するニーズが高まっており、ターゲットとなりうる市場と考え、チャネルやコストの面で、携帯電話事業者や政府関連サービス・プロジェクト等の、現在広く住民に普及しているサービスを提供する企業や団体との連携により、効果的な事業展開を考えている。
またルワンダは、医療領域においても、ICTの利活用・デジタルヘルスも進んでいる。
例えば、ルワンダはアフリカで初めて基本医療を支援する目的でアプリを採用した国である。患者はアプリを通じて医師と連絡を取り、処方箋を受け、訪問の予約を取ることができる。AI が制御しているこのシステムは Babyl と呼ばれている。機械の計算能力を人間による医療における最高の専門性を組み合わせることで、包括的ですぐに利用できパーソナライズされた医療サービスを創り出し、普遍的に利用可能にしている。
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出典:
CHW Central – Rwanda’s Community Health Worker Program
JICA – ルワンダ国ブロックチェーン技術と AI 診断・モバイル診療サービスを活用した P2P マイクロ保険事業案件化調査(SDGsビジネス支援型)業務完了報告書
Pacific Prime – Rwanda Health Insurance
総務省 – ルワンダ
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