アフリカ人口の見通し②減少予測編

2023.09.06
ANZA編集部
アフリカ人口の見通し②減少予測編

将来世界人口は減少する、という予測も

国連の予想では世界人口は2100年までに現在のおよそ73億人から110億人にまで増加すると言われています。前回の「アフリカ人口の見通し①増加予測編」の記事でも、この予想に基づき2100年までのアフリカ人口について分析しました。

一方で米ワシントン大学は、世界人口は2064年に約97億人でピークを迎え、2100年には88億人に減少すると予測しています。
同じ世界人口についても、異なる見解が示されています。

その要因は、ワシントン大学は研究に「教育水準の向上」を加味したことにあり、このため人口が減少に転じるとの結果に至りました。

※AAICレポートより引用

それでは、この「教育水準の向上」を考慮することによって、一貫して人口増加と予測されているアフリカについても減少すると見込まれるのでしょうか?

今回は、教育水準向上がアフリカ人口推移にどのような影響を及ぼしうるかに着目したいと思います。

教育水準が人口に影響を与える理由と背景

前述のワシントン大学の分析には、人口推移のデータに加え、教育水準の向上による働く女性の増加、避妊の普及、子供の数を抑制する意識の高まり、などの要素が盛り込まれていました。

教育水準の向上が少子化に繋がるという傾向は従来より様々な研究によって示されてきました。近年先進国の中でも出生率が減少する場合の主要な要因の一つでもあると言われています。

それではなぜ、教育水準が向上すると、少子化に繋がる傾向がみられるのでしょうか?

様々な研究があるので全てを語ることはできませんが、ごく一部を説明すると、教育によって女性の選択肢が増え早期の出産・結婚以外の道にも進みやすくなること、また幼児の生存率が高まりその結果として多産多死から少産少死へと移行しやすくなること、などが挙げられます。

少し時代の遡った研究ですが1994年のジェトロの研究から以下の結果が示されていました(1987年に途上国28カ国で実施された人口保健調査データに基づき分析)。

  • ・出生力は特に女性の教育水準との相関が強く、未就学の女性と高等教育を受けた女性と比べると、平均して2〜3人の差が生じる傾向がある。
  • ・母親が高等教育を受けるほど子供の生存率が高まるので、その結果として希望の子供の数は減少する傾向がみられる。さらに、父親よりも母親の教育水準が出生力に大きな影響を与えている。
  • ・国、地域、男女などによって教育の格差と相関がみられ、結果として出生力にも影響を与えている。

 

性別や国に関わらず高い教育が受けられることは喜ばしいことである一方、出生力の低下に伴う少子化が進むことで、世界全体の高齢化が広がるインパクトはかなり大きくなります。そのため不平等が課題となっている女性教育へのさらなる投資強化と併せて、社会制度の改革の必要性についても指摘されています。

アフリカにおける影響

それではこの教育の普及は、今後アフリカ人口にどのような影響を及ぼしていくでしょうか。
まずはアフリカの現在の教育水準に着目してみましょう。

識字率に基づいた教育水準によると、アフリカは他の地域に比べて低い数値であると言えます。世界平均の85.9%に対し、アフリカでは50%に満たない国が数多くあります。特に西部、中央アフリカでその傾向が強く、識字率が最も低いチャドでは男性が31%、女性が14%とかなり低い水準を記録しています

この数値からもわかるようにアフリカの教育水準は全体の平均値で見ると低く、さらに男女間での差がかなり大きいのです。

アフリカの教育の現状

教育水準が低いと言われるアフリカですが、その原因や現状はどのようなものなのでしょうか。

アフリカでは各国が独立した後、民族グループを超えて国民国家へと統一していくという目標の下、初等教育の義務化や高等教育の拡大が目指されました。この結果、識字率の大幅な向上など一定の成果が出ていたようです。一方で1980年代に入ると経済の低迷や爆発的な人口増加により、教育の拡充が追いつかず停滞状態に陥ってしまいます。

このような状況を受けて1990年に開催された「万人のための教育世界会議」では、全ての人への教育が国際的な目標として定められ、アフリカ各国でも初等教育の無償化を中心とした取り組みが始まりました。

また2000年に国連機関などが主催した世界教育フォーラムでは、女性の成人識字率向上や教育における男女平等などに焦点が当てられました。

依然として多くの課題が残されていますが、国際的な支援も含め少しずつ教育水準向上や男女格差是正の動きが高まっているようです。

アフリカの人口は減少する?

以上を踏まえると、今後アフリカの教育水準の改善が進んだ場合、アフリカの人口は減少していく可能性もあると考えられます。これは多産多死から少産少死への移行となり、生存率が高まる一方で出生率が下がるので、数でみると人口減少となる、という結果になります。

ただし、たとえ人口が減少傾向となった場合でも、アフリカの人口は世界の中で大きな割合を占めると予想されています。

その理由は、第一に他の地域・国々に比べてアフリカの人口ピークの時期がまだかなり先であること、第二に平均寿命が伸びることにより一定期間は大規模な人口を引き続き有することから推察できます。

これがアフリカの人口予測の特徴です。

中国を始めとする豊富な労働力を持つ人口大国は、アフリカより早い段階で少子化が進んでいくようです。そうなると、現在アジアに多数ある各種工場は、労働力を求めてアフリカに移転されるなど、世界の産業を支える拠点の変化が考えられます。

また、各国が少子高齢化に悩まされる中で、若い世代が多いアフリカの国々は次世代のビジネスチャンスを獲得できる可能性も高くあります。

教育格差の是正は容易ならざる喫緊の課題ですが、教育改善によってアフリカの多く国々でもビジネスチャンスを高めるメリットがあると言えそうです。

このようにアフリカは、例え人口減少となったとしても世界の社会を支える存在になっていくのではないでしょうか。

まとめ

今回はアフリカの人口予測について、減少可能性の観点からまとめました。

教育水準の向上を考慮すると、世界人口は一定の段階でピークを迎えた後、徐々に減少していくとの予測が示されています。

これはアフリカにおいても同じで、現時点では教育課題や男女間の平等について様々な課題が指摘されているものの、将来教育が普及することによってやがて同じ傾向を示す可能性があると考えられます。

しかしアフリカでは、人口が減少傾向となる前にまず人口が爆発的に増加する点に間違いはなく、世界の多くの国々において急速に少子高齢化及び人口減少が進みつつある中で重要な役割を果たしていく、と考えられます。

このように、世界の他地域と同様にアフリカの人口予測には教育水準も大きく関わっていると考えられます。

【出典】
ANZA:【アフリカなんでもランキング】アフリカの国別識字率トップ&ワースト10
BBC:https://www.bbc.com/japanese/53413717
総務省:世界の統計2021 (stat.go.jp)(総務省統計局)。
ジェトロ:https://ir.ide.go.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=45049&item_no=1&attribute_id=26&file_no=1

 

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