【アフリカファッションに注目!】サプール~世界一エレガントなコンゴの男たち

2023.10.03
ANZA編集部
【アフリカファッションに注目!】サプール~世界一エレガントなコンゴの男たち

【写真1:サプールたち_出典《インタビュー》世界一お洒落な男たちの「美学」 サプールは、なぜ高級ブランドに身を包むのか | MONOCO)】

前回のファッションの記事では、長い歴史を経て確立されたアフリカの伝統ファッションと、欧米の近代的なファッションをミックスさせた新たなファッションについてお伝えしました。
(前回記事:【アフリカファッションに注目!】アフリカファッションの現在~伝統と海外文化とのマリアージュ (anza-africa.com)

今回の記事では、その中でご紹介したサプールについて、人々のストーリーと共に深堀りしていきたいと思います。

平和への想いから生まれたサプール

前回の記事に詳述していますが、貧しさの中でも、年収の平均4割を海外の高級ブランド服の購入に充てる、”世界一お洒落な男たち”と呼ばれる集団があります。それがサプール(SAPEUR)です。

彼らは土日の礼拝になると、高級ブランドを身に纏い、自宅から教会等の目的地までの間、街中を気取ったポーズをしながら歩きます。

サプールの文化はコンゴ共和国に加え、コンゴ民主共和国(以下、DRC)でも浸透しています。

コンゴ共和国の首都プラザビルとDRCの首都キサンシャは、川を挟んですぐ目と鼻の先。その距離はわずか4~5キロで、モーターボートで5分と非常に近くにあります。

【図:アフリカにある、コンゴ共和国とDRC】

両国にサプールが生まれたのは約100年前。
発祥については諸説ありますが、カトリック信仰が一つの要因と言われています。
ヨーロッパによるアフリカ諸国の植民地争いに巻き込まれたコンゴの人々は、平和への想いが強く、カトリック信仰とともに平和主義者が増えていきました。人々は自らの平和信仰をファッションと結びつけて表現するようになり、後にそれがサプールとなりました。

2つの国のサプールについて

1.コンゴ共和国

コンゴ共和国は日本と面積がほぼ同じであるものの、人口は約32分の1という小さな国です。

サプールの起源ともいわれる社会運動家アンドレ・マツワ氏は、コンゴ共和国の出身。彼はフランス植民地時代、黒人差別反対運動を展開し何度も投獄されており、黒人の権利を獲得するために人生を捧げた、コンゴ共和国の英雄と言われています。

1922年にパリからコンゴ共和国に強制送還された際、ヨーロッパの装いでびしっとキメて飛行機に降り立ったマツワ氏の姿は人々を驚かせました。

“おしゃれに肌の色なんて関係ない。俺たちの方が白人より格好よく着こなせる”

彼のそんな意思表示だったのかもしれません。

2.DRC(コンゴ民主共和国)

アフリカ大陸で2番目の広さを誇るDRC。

ファッションとは離れますが、豊富な資源と近年改善が進むビジネス環境で、今世界から注目を集めています。

(詳しくはこちら:コンゴ民主共和国|ビジネス基礎情報|アフリカ国別 – ANZA -日本企業のアフリカでの「始める」を応援します- (anza-africa.com)

1980年代のアフリカンミュージックを牽引したパパ・ウェンバ氏が、DRCを代表するサップの1人です。

【写真2:パパ・ウェンバ氏】

1960年の独立後の混乱により一時サプールは廃れるものの、パパ・ウェンバ氏が一流ブランドのスーツを身に纏い、ステージへ上がったことで、サプールのファッションは急激に浸透、諸外国にも広まりました。サプールの立役者といっても過言ではありません。

洋服を着こなすだけじゃない、人々を魅了するサプール

サップはただ格好よく服を着こなすだけでなく、人々を魅了しなければなりません。

人を引き付けるためのテクニックはいくつかありますが、その代表例が、ブランド靴で地面を踏み鳴らして前進する、ディアタンスと呼ばれるステップです。

ふらふらとした足取りの中よろめくようなそぶりをしたかと思うと、急に小刻みでキレのあるステップを踏む。片足を引きずり人々の視線を靴に集めたところで靴の埃を手ではたくような仕草をして見せる。

それを見ていた子供たちが歓声をあげる。

ステップを踏む数だけ、観客が増えていく。

偉大なサップになるためには、ファッションに対する知識だけでなく、ステップなどの技術を伴わないといけないのです。

彼らの考え方やスタイルは、こちらの動画でもご覧頂くことができます(BGMは前述のパパ・ウェンバ氏です)

平和をまとった紳士たち
平和をまとった紳士たち – YouTube

サプールたちのストーリー
youtube.com/watch?v=q_wjyCPRC9g

それではここからは実際にサップとして活動している人々について、エピソードと共に紹介したいと思います。

(上記の動画に登場している人もいます)

サプールを”選択”する

シングルファザーのジョンは、電気工事の仕事をしながら、実家暮らしで子供を養っています。一家の大黒柱として家計を支えながら、サップとしても精力的に活動しています。

稼いだお金のほとんどを服に注ぎ、その額は15年間で総額300万円。給料8年分に値します。

時に1着7万円もするジャケットを購入しますが、1回で支払いきれない場合、少額のお金を入れキープします。その後、分割して支払い、全額支払いが終了すると自分のものになるという仕組みです。コツコツ貯めて手に入れるからこそ、一層高尚なものになるのかもしれません。

「おしゃれというのは無限の組み合わせの中から自分だけの色のハーモニーを奏でること」と彼は言います。

映画館もない街で、人々の娯楽として暮らしを彩るサプール。

自分自身の人生も灯すサプール。

様々な困難がある状況でも、彼らはサプールという生き方を選択し、その選択に誇りを持っているのです。

サプールは非暴力の運動

1997年、コンゴ共和国では大統領選挙を巡る闘争が起き、その後国民を巻き込む内戦となり、推定で1万人が犠牲となりました。

首都ブラザビルでも激しい銃撃戦が繰り広げられ、サップだったセブランは、家族の命を守るため、家を捨て逃げ出す決意をしました。庭に深さ2メートルの穴を掘り、そこに大切な服や靴を埋めました。

3日ほどで掘り返すつもりでしたが、実際に家に戻ってこられたのは1年後。

穴を掘り返すとすべてが腐敗し、使い物にならなくなっていました。

戦争のせいで大切なものを失ったセブランは、こう言います。

「サプールは武器を持たず、軍靴の音は鳴らしません。ブランド靴の音を響かせます。ただ服で競い合うのです。」

「サプールと戦争は対極にあります。共存などできません。サプールであり続けるということは、非暴力の運動でもあるのです。」

‘Made in Congo’という新たな夢

サップたちは、高い美意識とセンスを有しており、高品質な装飾品を着こなす自信を持っています。しかし、現状、それらは外国製のものであることがほとんどです。

それがコンゴの人々のコンプレックスなのです。

その中でも、小さな一歩を踏み出している人がいます。

靴屋を営むジュストゥは、クロコダイルの皮を輸入し高級な靴をオーダーメイドで製作しています。手動ミシンが置かれた小さな工房では従業員が5名働いており、現地の雇用を創出しています。

ヨーロッパの服への憧れから始まったサプールに、’Made in Congo’という新たな夢が加わることで、サプールはより発展するのではないでしょうか。そして、それは雇用を生み出し、国の未来の発展にも繋がります。

日本とサプールの繋がり

ケンゾー、イッセイ・ミヤケ、ヨージ・ヤマモト、タケオ・キクチ、カンサイ・ヤマモトといった日本のブランドもサップから高い支持を受けています。

遠く離れたコンゴ共和国・DRCで、日本の高級ブランドが人々の表現のツールになっているのは、少し不思議な感じがしますが、ファッションがコンゴ共和国・DRCと日本を繋ぐ架け橋になっているのです。

また、2017年4月、サプール協会日本支部が発足しました。サプール協会日本支部は、彼らの「おしゃれで平和を愛するメッセージ」を日本中に伝え、サプール達を日本へ招聘、認知拡大していくことを活動の基礎としています。

サプール協会日本支部
SAPEUR JAPAN (sapeurjp.com)

昨年2022年6月にはJICA(独)国際協力機構)からの取材もあったそうで、少しずつ日本での裾野の広がりも感じられます。
「JiCA MAGAZINE」6月号でサプール特集掲載! | SAPEUR JAPAN (sapeurjp.com)

 

【参考文献】
THE SAPEUR -コンゴで出会った世界一おしゃれなジェントルマン- (2016). オークラ出版. 茶野邦雄.
WHAT IS SAPEUR? -貧しくも世界一エレガントなコンゴの男たち- (2015). 祥伝社. NHK「地球イチバン」制作班ディレクター 影嶋裕一
サプール協会日本支部HP
SAPEUR JAPAN (sapeurjp.com)
《インタビュー》世界一お洒落な男たちの「美学」
《インタビュー》世界一お洒落な男たちの「美学」 サプールは、なぜ高級ブランドに身を包むのか | MONOCO
アフリカ各国トピックス -コンゴ(共)-
000467806.pdf (mofa.go.jp)
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