【ANZAインターン中村のザンビア日記 ⑤】ザンビアの学校でサッカーイベントを開催!(前編)

2023.06.07
ANZA編集部
【ANZAインターン中村のザンビア日記 ⑤】ザンビアの学校でサッカーイベントを開催!(前編)

2022年11月に南部アフリカ・ザンビアの西部セナンガにあるセカンダリースクールでサッカーイベントを開催しました(セカンダリースクールとは、中等教育であり日本でいう中学校や高校にあたります)。

そこでイベントの様子などを前編で、スポーツイベントを運営する上でのポイントを後編に、分けてご紹介します。開催までには色々なハプニングもありましたので、今後イベント企画される方は参考にして頂けると幸いです。

イベントのきっかけ_K先生からの依頼

「スポーツを通して平和を構築できるようなプログラムを作って欲しい」。私が現地にいた頃、セナンガセカンダリースクールのK先生からこのような依頼があり、日本からの留学生と協力してサッカーイベントを企画・開催しました。

依頼をしてくださったK先生は、過去に日本の大学の平和とSDGsに関する授業をオンラインで履修しており、平和についての関心が非常に高い、という背景がありました。

また、ザンビアを始めアフリカの国々ではスポーツをレジャーとしてだけではなく、人間力を養うための手段としてしばしば活用されています。例えば、ザンビアの首都では非行に走っていた少年がサッカーに熱中することで社会復帰できるようにサポートする活動などがあります。しかし、K先生によると首都と比較して西部ではスポーツを通して平和を目指す活動があまりないということで、今回イベントを開催することになりました。

【地図:(右)ザンビアの位置/(右)ザンビアの首都ルサカとセナンガの位置】

ゲームルール_2つの評価軸

当日は20代前半の選手が集まり、ピッチで戦いました。試合は20分ハーフ、トーナメント形式で1位から3位までのチームには表彰用のトロフィーを準備しました。

今回のイベントの大きな目標は、K先生からも依頼のあった「スポーツを通して平和を構築する」というテーマを達成すること。そのため、通常のサッカー大会とは異なり、議論と協力の大切さを伝えるための仕掛けを設定しました。私・K先生・日本からの留学生の3人が、試合中の貢献度と休憩時間中の議論の積極性の二つの観点から評価し、全体から「優秀賞の選手」を表彰する、という仕組みです。私の提案が受け入れられ、今回試みとして初めて実施することになりました。

当日のフローは、まず試合の前に各チームが試合に勝つための戦術やチームワークを高めるための目標を設定し、試合を実施。その後、試合の休憩時間と試合後にその目標が達成できたかどうかや改善点などを話し合い、紙にまとめる、という流れで進行しました。

今回集まったメンバーは基本的に現地語と公用語の英語を両方が使えます。しかし選手は現地語の方が得意だったため、議論はまず現地語で行われました。そして、議論の内容を正確に把握するために英語で紙にまとめてもらいました。選手の発言量や発言内容は、選手の議論の積極性を測る重要な指標であるため、評価者(K先生、私、その他日本からの留学生)も含めてみんなで共有できる形に可視化したのが工夫した点です。

【写真1:試合の間のディスカッションの様子】

試合の様子_ゲーム運びの特徴

試合は約1時間遅れでキックオフ。時間の遅れはザンビアではよくあることで選手は普段から慣れているため、大幅な遅れにも関わらず文句ひとつ無く試合が始まりました。

ゲーム運びの特徴はパスに現れていました。

序盤は、両チーム、ロングキックを使いながら試合を進めます。グラウンドを広く使いながら相手の出方を見つつ、跳躍力を活かした激しいボールの競り合いで選手が会場を沸かせます。グラウンドの半分近くまで届くキーパーの手を使ったボール配給などもあり、このままロングボールを使った試合展開が続くと予想されました。

しかし、試合が5分ぐらい経過すると両チームとも短いボールを繋ぎ始めました。首都で行われるアマチュアの試合ではロングパスを展開するスタイルが主流で、試合が落ち着くことはほとんどありませんでした。しかし本イベントに参加したチームは比較的短いパスを繋いでいる印象でした。

グランドを比較すると短いパスを繋いでいる理由が理解できました。

ザンビア西部では砂浜のような質のグランドであるため、選手の足がとられてロングボールを蹴ることが難しく、結果として短いパスを繋ぐスタイルになっているようでした。また、砂浜のような質のグランドであるため一般的なサッカーグラウンドと比較して疲れやすく、細かくボールを繋いで攻める戦術になったのだと思います。

一方首都では、芝と土が混ざったグラウンド・人工芝・天然芝などの比較的ロングボールの蹴りやすい環境、または短いパスを繋ぐことが難しい環境でサッカーをしていることが多いため、ゲーム運びに違いがみられたと考えられます。

【写真2:試合の様子。砂浜のようなグラウンドで、足が取られやすい】

試合の様子_観客の声援

試合は1点差で勝敗が付く非常に僅差のゲーム展開が続きました。決勝戦も同様になかなか点が決まらず、0-0のまま延長へ。両チームチャンスは作るものの延長戦で決着がつかずPK戦までもつれました。

決勝が始まったばかりの時は観客がほとんどいなかったものの、時間が経つにつれて徐々に増加。15時過ぎには、授業が終わったセナンガ・セカンダリースクール学生が中心に集まりました。

この観客によって、最後のPK戦では、逆に選手達が非常にボールを蹴りにくい状況になりました。なんと、学生がゴール裏に行きキッカーに対して蹴る方向を指示したり、踊ったりするのです。このため選手が集中しにくい空気になっていました。

一方で、点が決まったときには歓声が上げて走り回り大いに場を盛り上げていました。また、ゴールから外れたボールを学生が取りに行き、そのボールで遊ぶなど、温かい空気と自由な雰囲気もありました。

【写真3:PK戦の様子。ゴールを取り囲むように観客が集まっている】

試合終了後の様子_表彰式

PK戦終了後、表彰式を行いました。まず、K先生がイベントの総括をし、3位から順番に表彰しました。各チームのキャプテンは笑顔でK先生やコーチと握手をし、K先生からトロフィーを受け取り記念撮影を行いました。キャプテンは自分のチームに戻ったあともチームメイトと写真を撮ったり、トロフィーの取り合いをしていました。

次に、優秀賞の発表に移りました。ぎりぎりまでどの選手にするのか迷っていましたが、決勝戦での体を張った守備、疲れている選手への呼びかけ、議論の積極性から優勝チームの守備の中心選手を選びました。優秀賞は一般的には攻撃の選手が選ばれることが多いため、選ばれた選手はとても驚いていました。

【写真4:表彰式の様子。選手たちと一緒に】

このサッカーイベントは、選手と観客が一体となったイベントとなりました。これを通じて、選手たちには勝敗だけでなく協力することの大切さが伝わっていると嬉しいです。

この記事では、イベントの様子を中心に記載しました。後編の記事では、イベントを開催する上でのポイントについてご紹介します。

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