アフリカの縮図と呼ばれるカメルーン共和国(以下、カメルーン)。その理由は、250以上の多様な民族が存在し、アフリカ大陸のほとんどの気候・地勢が揃っていることです。
また、内陸国のチャドや中央アフリカと国境が接することもあり、「中・西部アフリカのゲートウェイ」となる地理的優位性を秘めており、ビジネスの場としても十分魅力があります。
筆者は2018年、同国に5ヶ月間滞在していました。今回は現地での生活の経験もふまえてカメルーンについて紹介していきます。
カメルーンの基本情報
以下、カメルーンの基本情報をまとめました。
面積:475,440平方キロメートル(日本の約1.3倍)
人口:2,587万人(2019年)
人口増加率:2.6%(前年比)
首都:ヤウンデ
民族:バミレケ族、ファン族など(約250種以上)
宗教:キリスト教、イスラム教等
通貨:CFAフラン(XAF)
※1ユーロ=655.957CFA(固定レート)
※1円=5CFA(2020年7月)
公用語:フランス語、英語
カメルーンの経済状況
カメルーンは石油や、農業製品、特にカカオの輸出が盛んに行われています。また日本でも好まれるペンジャ産のコショウでも有名です。
GDP:387億米ドル(2019年)
1人当たりGDP:1,497米ドル(2019年)
GDP成長率:4%(前年比)
輸出総額:65億米ドル(2017年)
輸入総額:103億米ドル(2017年)
カメルーン進出に”消極的”な日本企業
カメルーン現地では日本企業の活動はあまり積極的に行われておらず、街中で見かけるトヨタ車や大型スーパーに陳列された日本食からしか日本の企業活動を伺うことができなかった、と言うのが現地に足を運んでみた感想です。
実際、現地に事務所や支店を有する企業は、味の素、電通、豊田通商、ニプロ(50音順)の4社のみです。日本企業で輸出を積極的に行っている製品として、プリンターなどの電気製品や自動車関連部品が挙げられます。
カメルーンは、フランス語に加え英語を公用語としており、西にはアフリカの経済大国、ナイジェリアが位置しているため、一見すると日本企業が進出しやすいと思われるかもしれません。
しかし実際のところは英語圏はナイジェリアに隣接する2つの州のみで、残りの8州(首都のヤウンデ、経済都市のドゥアラを含む)はフランス語圏で、地域によって完全に分かれています。そのため筆者が滞在していた首都のヤウンデ(フランス語圏)では、日常生活で英語を耳にすることはほとんどなく、カメルーンの英語圏出身の方と話すときのみ、英語でコミュニケーションをとっていました。
つまり、カメルーンのフランス語圏では、英語使用頻度は日本とほとんど変わりません。
仕事で必要なときや、現地の言葉が分からない人とのコミュニケーションをする際に英語を用いていました。
また、近年過熱する英語圏の独立運動もあり、安全上の理由から英語圏での企業活動が難しく、フランス語圏での企業活動が予想されます。加えてナイジェリアに拠点を置くボコ・ハラムによるテロ被害が極北州で頻発しおり、同国北部での企業活動も厳しい現状にあります。
しかし首都のヤウンデや、経済都市のドゥアラでは積極的な経済活動が行われています。
特にドゥアラはギニア湾に面しており、海上からの荷物運搬も容易にできるという地理的優位もあります。そのドゥアラ港では、隣国の中央アフリカ共和国の75%近くの貿易が行われています。
さらに、ドゥアラから150km南に位置するクリビでも港整備が本格的にスタートし、「中・西部アフリカのゲートウェイ」としての機能を高めていくことが予想されます。
カメルーン進出に”積極的”な中国企業
同国に進出している主な外資企業は、Orange(携帯)やTotal(ガソリンスタンド)など旧宗主国であるフランス系企業が多い一方で、近年は中国企業の存在感が強まっています。
特にインフラ面では、多くのプロジェクトを手掛けており、2019年のサッカーの大会、アフリカネーションズカップで使用予定だった(直前でエジプトに開催地変更)サッカー場建設をはじめ、首都の高層ビルの建設を行っています。
2017年のカメルーンの輸入額では、第1位が中国、第2位がフランスとなっており、額面上では、中国がフランスより1.7倍多く輸出を行っています。
また2018年時点でカメルーンは中国に推定55億米ドルの債務があり、アフリカ域内で7番目の多さとなっています。
カメルーンで広がる「5S・カイゼン」
現在カメルーンでは、ODA事業として「中小企業品質・生産性向上(カイゼン)プロジェクト」が実施されています。
カメルーンには第3次産業を中心に約10万の企業が存在し、そのうち99%が中小零細企業に分類されています。しかし同国企業の起業2年目までの廃業率は57%に達し、事業の継続性に課題があります。そのため、カイゼンプロジェクトでは、ビジネス開発サービス提供の強化を図り、企業の持続性を高めるとともに、雇用の安定化、経済競争力の向上を目指しています。
具体的には、5Sやカイゼンを中心としたコンサルタント養成研修プログラムの実践し、会計・財務やマーケティング、事業計画作成のノウハウの提供を実施してきました。
5Sやカイゼンの導入は世界銀行グループの国際金融公社(IFC)やフランス開発庁(AFD)、ドイツ国際協力公社(GIZ)そして、国連開発計画(UNDP)からも高い評価を受け、その実践への協力を受けいています。
これまで41人の民間や政府系人材からなるコンサルタントの育成を達成してきましたが、今後も全国的にプロジェクトを拡大し、同国内の中小企業の5%にあたる、5,000社に5Sやカイゼンが普及していることを目指しています。
アフリカでビジネスを行う際、パートナーの現地企業とのやりとりがスムーズにいかないことが多く、進出の障壁となることもあると思います。
しかし、カイゼンプロジェクトによって、日本式のやり方のメリットを理解し、既に取り入れている企業であれば、書類管理といった基本的なことから、事業計画の作成といった事業の中心となることまで、ある程度のノウハウが蓄積されていており、連携がとりやすくなるのではないでしょうか。
日本のODA事業によって構築された現地のビジネス基盤をうまく活用していくことが、カメルーン進出する上で重要となってくるのではないでしょうか。
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《参照》
2020年7月27日閲覧
『カメルーン基礎データ|外務省』
『Cameroon|Trade Summary』
『カメルーン、“黄金郷”への盲信 中国主導で開発、環境破壊も次世代への恩恵期待(1/4ページ)』
『品質・生産性向上(カイゼン)推進を通じた総合的中小企業振興プロジェクト』
『カメルーン 将来は小エビとは呼ばせない?』
『The Top Ten African Countries With the Largest Chinese Debt | The African Exponent』
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