「できるかできないか」ではなく「やりたいかやりたくないか」を決断の指標に。

2020.11.17
jam tun 田賀朋子氏
「できるかできないか」ではなく「やりたいかやりたくないか」を決断の指標に。


ANZAでは、セネガルのjam tun(ジャムタン)を立ち上げられた田賀朋子氏に、ご自身のアフリカでのご経験と想いについてお話を伺いました。

まずは田賀さんが行っている事業概要についてお聞かせください。

アフリカ布を使って、セネガルのシンチューマレムという村の職人が仕立てた服や小物などを岡山県の矢掛町を中心にイベント出店の形態で販売しています。

お客様にはアフリカへの「支援」というよりも、「魅力的」だから買っていただきたいと思って商品を作っています。また日本で購入していただいた方と実際に商品を作ったセネガルの作り手さんをつなげる活動として、買ってくれた方の写真を送ったり、セネガルの作り手さんの生活を伝えたりもしています。

ジャムタンを立ち上げたきっかけをお聞かせください

もともと途上国支援に興味があり、イギリスの大学院に開発学を学びに留学をしていました。ただ大学院ではフィールドワークに行けず、学問としてはこうやったら貧困が減るということは習いましたが、現実で貧困が終わっていないのには現場に何か問題があると思いました。そこで国際協力の現場を見ようと思い、JICAの青年海外協力隊として2年間西アフリカのセネガルで生活改善活動に取り組みました。その一環でゴミ問題の啓発をしながら、現地の方々とリサイクルの鞄やポーチを作って販売をし、収入向上につなげるいう活動をしていました。これが今のジャムタンの立ち上げのきっかけとなっています。

青年海外協力隊の2年間で、憧れていた国際協力で活動することができ、現場というものがどのようなものか理解することができました。一方で現地の人々の持続可能性を追求したのかと疑いたくなるような「開発・援助」のネガティブな側面を目にしてショックを受けました。青年海外協力隊以前は、その後はグローバルなNGOや国際機関などの国際協力のキャリアを歩んでいくことを考えていましたが、私なりのアプロ―チは何か?と考えるようになりました。

そこで援助のことについてもう一度考えると、一時的にお金や物をあげる押し付けがましいものではなく、対等な立場で、見過ごされてしまいそうな村の人々のこともちゃんと考えた繋がり方がしたいと考えました。国連やJICAと比べるとできることは限られますが、自分ができることを、持続可能で対等な立場で一緒に頑張れる繋がり方をしていきたいなという思いと、2年間滞在していたセネガルのコミュニティでの繋がりを継続したいという思いが重なり、2017年にジャムタンを立ち上げました。

ジャムタンの活動を始められて3年が経ちますがこれまでの活動を振り返ってください。

活動を始めた初期から、いろんな方が興味を持ってくださいました。やはり地方都市である岡山でアフリカの雑貨を見ることが珍しかったのだと思いました。取材をしてくださる方もいて、徐々に活動は広がっています。最近では岡山の障害者就労継続支援A型事業所と協働した商品作りもしています。

そのコラボはどういったコラボですか?

岡山理科大学のエシカル消費を岡山に根付かせる活動をしているゼミから、フェアトレード部門として声をかけていただきました。そこで障害者雇用継続支援の「ありがとうファーム」さんという事業所と出会いました。本来はそれぞれが商品を1つ開発するプロジェクトでしたが、1年という限られた時間で成果を出すために一緒に商品開発をしようということになりました。それが発展し、現在アフリカ布を使った日傘を協働で制作しています。


これまでの活動で大変だったことをお聞かせください。

ジャムタンとしては、「魅力的な商品」だから売りたいという思いがあるので、「支援」になるという面はあまり押し出したくないのですが、買ってくださる方の中には「支援」だからという方が響く方もいるので葛藤はあります。どちらも購入という結果だけを見ると同じなのでどういう売り方をするべきなのか迷っています。特にPRの際に「援助」という言葉を使わずに、活動の意義をどのように伝え、かつ商品自体の良さを知ってもらえるかは難しさの1つです。

また立ち上げ当初はビジネスの経験も全くなかったので、テナントへの出展料や商品の価格設定の仕方もわからなかったんですが、実際に事業を進めながら学んでいきました。今、当時のことを振り返ると「よくあんな状態から始めたな」とも思いますが、フェアトレードや国際協力に興味ある方が「こういうイベントがあるからどうかな」とか「ここに出店してみたら」など声をかけていただきながら、1年目は動いていました。

半年、1年くらい活動して、自分が起業していることを意識し始め、2018年には地元の銀行と新聞社が開催していた「イノベーションスクール」に通い、アイデアの出し方を学び、他の事業家の方から刺激を受けながら人脈を広げていきました。

今後のビジョンをお知らせください

現在は、コロナ禍で渡航ができない状態で、荷物も届きにくいのですが、それでも繋がりは持ち続けたいなという思いがあります。そのため最近ではセミオーダーの形をとって、(できればオーダーメイドだけにしたいんですが)商品を求められる分だけ作って、それを求めてくださる方に届ける仕組みを作りたいと思っています。そうすることで、作り手も買ってくださる方の顔が見れ、作りがいが生まれますし、作る量を抑えられロスが減ります。買う人にとっても自分の好きな柄と形を選べ、愛着を持って使ってくださると思っています。

今後もオーダー品だけでなく、従来通りの商品の販売方法も続けていきますが、オーダーメイドを主流にできればロスも減り、効率の良い生産体制ができると思っています。

ということは、あまり事業を拡大していこうとうは考えていらっしゃらないのですか?

そうですね、大量生産ではないやり方がいいと思っています。

今のところは、セネガルのシンチューマレムという村で今の仕組みを確立させたいです。もし、この仕組みに興味を持ってくださる方がいれば、同じような仕組みで服に限らず、現地の特産品でも、それを日本に受け入れられる形にして、作り手と買い手を繋ぐことをいろんな地域でできたらなと思っています。

アフリカの布は、買っても普段使いが難しい印象があるのですが。

はい、できれば普段使って欲しいとは思っているのですが、、、。

確かにこの活動を行っていて、年配の方から興味は持ってもらえるけど、「自分は着れないな」と言われることもあります。ただ1回試着してくれると、雰囲気も明るくなるので「アフリカ布に対する印象がガラッと変わった」と言ってくださる方もいます。

また商品のデザインを考える際、恥ずかしさを感じずに普段も使えるように、民族衣装としてではなく、おしゃれ着の1つとして着れる物を目指しています。なので柄が派手なぶん、デザインはシンプルに、シルエットをきれいにするようにこだわっています。買ってくださった方の中には、「お出かけするときに着てます」だとか、「褒められました」と報告してくれる方もいらっしゃいます。

次に現地のマネージメントについてお聞かせください。

今は現地の仕立て屋さんのリーダーもスマートフォンを持っているため直接話せるんですが、ジャムタンを立ち上げた当時はスマートフォンを持っていなくて、村の若者に借りて連絡のやり取りをしてくれていました。商品の品質の改善点を、写真とボイスメッセージでいかに、視覚と声で伝えるかは工夫していました。

現地に渡航できるのは年に1度くらいなのですが、その際に直接指導するとともに、日本のお客さんの反応も伝えモチベーションを維持できるようにしています。最初はなぜダメなのかわからなかったり、同じミスを繰り返していましたが、今では写真を見せるだけでダメなところに気付いたり、自分から失敗したところについて相談してくれるようになりました。

またスマートフォンを持ち始めてからは、日本でもアフリカ布を仕立てている競争相手がいるということに気づき、「自分も頑張らないといけない」と仕立て屋さんの方から言ってくれる事もありました。

特にリーダーは時間も守ってくれ、連絡をこまめにとってくれるので信頼しています。

先日初めて、Zoomでお客さんと仕立て屋さんを繋げ、一緒に布屋さんに行き、布を一緒に選ぶということをしました。その時でも、事前にZoomの練習や回線トラブルの際の準備もしてくれましたし、当日は1時間前に布屋さんに着いて待ってくれていました。

仕入れから商品を作り、お客さんに届けるという点ではDtoCの究極のモデルですね。

そうですね。これもセミオーダーの一環として実施しました。

今回は、お客さんが布の状態で欲しいということだったので布メインだったんですが、今後は布を選んで、次に洋服を選ぶということができればいいと思っています。私自身、セネガルに滞在していた時に布を選んで、洋服を仕立ててもらうことが楽しみの一つだったので、お客さんにもその楽しさを感じていただければと思っています。

最後にアフリカ進出を検討している日本企業にメッセージをお願いします。

何かをやりたいと思っているなら、「できるかできないか」ではなく、「やりたいかやりたくないか」とか、「楽しそうかどうか」という基準を決断の指標にしてもらいたいです。私は楽しくなかったら活動を続けられていなかったと思いますし、楽しそうにやっているからこそサポートしてくださる方がいたのかと思います。

支援のあり方もそうかもしれませんが、切羽詰まってお願いするのではなく、頑張っている人がここで活動しています、という方が人に刺激を与えられるのではないかなと思っています。そして楽しそうな雰囲気を伝えられ、一緒にやりたい、応援したいと思ってくださる方が増えたらいいなと思っています。

やっぱり楽しく活動していることが一番だと思います。やりたいことをやって、結果それが向こうのためにもなるかもしれないですし、地元のためにもなるかもしれません。

本日はありがとうございました。

青年海外協力隊から帰国後、持続可能で現地の方と対等な立場で、一緒に頑張れる繋がり方を目指しジャムタンを立ち上げた田賀朋子氏。今回のインタビューからは、田賀氏が買い手や作り手、そして商品など、ジャムタンに関わる全てを大切にされているということが伝わってきました。支援と一線を引いて、魅力ある商品を販売するという意思のもと、ジャムタンの活動をしていて葛藤を抱えることもあるようですが、アフリカビジネスにおける重要な問題提起をしてくださったのではないかと思います。対等な立場で持続的なビジネスを行うことこそが、アフリカで求められているのではないでしょうか。

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