【アフリカの水問題】工夫と技術を駆使した日本企業4社の取り組み

2024.03.22
ANZA編集部
【アフリカの水問題】工夫と技術を駆使した日本企業4社の取り組み

【写真:ヤマハクリーンウォーターシステム:008Aモデル※浄水生産量が8,000L/日】製品紹介 – クリーンウォーターシステム(CW) | ヤマハ発動機 (yamaha-motor.co.jp)より参照

前回の記事では、アフリカの水問題の現状についてお伝えしました。
【アフリカの水問題】現状と人口増加が生み出すさらなる水不足 – ANZA -日本企業のアフリカでの「始める」を応援します- (anza-africa.com)

国連は、このまま気候変動が続いた場合、将来的には30億人が水不足に直面すると推計しています。
アフリカにおける安全な水へのアクセスについては、未だ多くの課題が残っているものの、人々にきれいで十分な量の水を届けるため、日本の民間企業も積極的に活動しています。

今回はそんな日本企業4社の取り組みについて、ご紹介したいと思います。

①ヤマハ発動機:容易なメンテナンスで現地の人々による運営を可能に

ヤマハ発動機は、二輪車や四輪バギー、電動アシスト自転車などのランドモビリティ事業、ボート、船外機等のマリン事業、サーフェスマウンターやドローンなどのロボティクス事業など多軸に事業を展開しています。

2000年代から村落向けに浄水装置の開発を行い、ついに2010 年から『ヤマハクリーンウォーターシステム』の販売を開始しました。2023年8月までに、アフリカ・アジアを中心に 50 基の導入実績があります。

浄水装置の使用者となる、現地の村落、病院や学校などは、装置を購入するための資金がないため、ODAや国連機関からの公的資金を用いて設置を進めています。

また、設置だけに留まらず、これからこのシステムを活用する集落の子どもたちに対して、これまでの生活用水(河川等から汲み上げた水をそのまま利用)の危険性と、安全な水の重要性をより深く理解してもらう啓発活動を行っています。

ここでポイントになるのは、「電気を使わない」「言語に頼らない」など現地環境に即した啓発活動のパッケージとして、紙芝居や寸劇で補足する、という手法です。最先端技術を駆使するだけではなく、現地での資源が限られた環境下でも、きちんと人々に伝えるために、現地の人々の目線にあった手法の選択が重要になります。

浄水装置の設置は、水配達や洗浄・製氷など、新たなビジネスのチャンスを生み出すきっかけにもなっています。きれいな水は、衛生概念の向上や疫病予防など直接的なベネフィットだけでなく、村落の活性化にも繋がっています。

【ヤマハクリーンウォーターシステム:現地の活動と人々の声】

 

②三菱ケミカルアクア・ソリューションズ:国際機関やJICAとの連携で利用人口を最大化

三菱ケミカルアクア・ソリューションズは、1952年に前身の日本錬水株式会社が事業を開始して以降、70年にわたり水処理、分離精製事業を行っています。2019年には地下水飲料化サービスのパイオニアである株式会社ウェルシィと合流し、上水から排水まで、様々な事業を通じて水の処理と活用に取り組んでいます。

アフリカでは、国連開発計画(UNDP)と共同で、ケニア東部州マチャコス県の約40世帯のコミュニティに浄水を供給する事業を展開しています。

現地では電力が利用できないため、動力が不要でメンテナンスも容易な緩速ろ過装置(*)設置し、近隣の運河から引いた水を浄化して地元住民に供給しています。

*緩速ろ過装置:
細かな砂の層に1日4~5mのゆっくりとした速さで水を通します。ゆっくりと流すと砂層に存在する微生物の分解作用によって水の中の浮遊物や細菌などを取り除くことができます。山あいに降った雨が地中ににじみ込み、ゆっくり時間をかけて水脈を伝い、微生物等による段階的な浄化を受け、やがてきれいな水となって麓に湧き出す。緩速ろ過方式は、その自然の原理を人工的に再現したものです。薬品を使わず、自然にやさしい浄水ができます。

同時に、浄化した水を地元住民が近隣の人々に販売して現金収入を得る浄水ビジネスモデルも開発しました。

安全な水供給等の環境配慮型ソリューションの取り組みも積極的に推進しており、UNDP や JICA との協業も高い評価を受けています。

【緩速ろ過装置(三菱ケミカルアクア・ソリューションズ)】

 

③Mizuha:新技術できれいな水をより多くの人へ

Mizuhaは、大気中の蒸気を液体化し飲料水へと変える技術を持つ、空水機を販売しています。構造は除湿器と似ており、吸気口から取り込んだ空気を冷やして結露させ、銀イオンと特殊なフィルターで除菌し、およそ5時間かけて飲み水を生成します。理論上は気温10℃、湿度30%の空気と、電源さえあれば世界中のどこでも水が作れるそうです。

Mizuhaの空水機は、エジプトで注目を集めています。

現在エジプトは、水資源の95%をナイル川に依存していますが、今後も急激な人口増加が見込まれており、水不足が懸念されています。また、カイロ東の砂漠地帯に、「首都移転計画」が進められていて、これまで頼ってきたナイル川以外の水源が求められているのです。

Mizuhaは2023年8月から現地5か所で実証実験を行い、11月15日に正式にエジプト政府と契約を結びました。今後はアフリカや中東で広く販売していく予定です。

水を生成する際の電力消費が大きいことが課題として挙げられているものの、世界各地で深刻化している干ばつ化を、テクノロジーの力で乗り越えようとしています。

【空気から水を精製する技術(Mizuha)】

 

④Sunda Technology Global:現地の状況に即した料金回収システムを確立

Sunda Technology Globalは、ウガンダで、井戸を始めとしたコミュニティ共有型水源の持続可能なO&M(オペレーション&メンテナンス)の仕組みを構築しています。

中でも、継続的な水料金回収とそれによる継続的な井戸の稼働を実現するために、自動化された料金回収の仕組みを採用しています。

また、現金ではなくモバイルマネーによる支払いと管理をすることで、回収金管理の安全性も向上。利用料に応じた課金により、公平性も高め、住民も安心して支払えるようになりました。

これは技術的ハードルだけではなく、心理的ハードルの解消にもつながっています。
現地では、元々「水にお金を払う」という習慣がありませんでした。そのため、水道管理担当者といえども同じ村人が、隣近所から水道料金を回収する、ということには抵抗感があり、回収がしづらい側面がありました。しかし、モバイルマネーにより、半ばシステマティックに回収できるようになったことで、この抵抗感が薄れ、水道料金の支払いという「新たな慣習」が浸透するようになりました。結果的に水道料金の回収しそびれることが減り、また回収した水道料金の盗難リスク軽減にも繋がっています。

Sunda Technology Global:現地の活動と人々の声

2023年7月にはクラウドファンディングを実施し、450人超から760万円ほどの支援を受けています。
アフリカで水に苦しむ人をゼロに!住民待望の井戸管理システム拡大へ(SUNDA 2023/05/15 公開) – クラウドファンディング READYFOR

 

今回ご紹介したのは4企業ですが、アフリカの水問題を解決するために、他にも多くの日本企業が様々な形でアプローチしています。現地を訪れた際には、ぜひ、水をどのように利用しているかも気にかけてみて頂けると、様々な企業努力と現地の関り方に気づかれるかと思います。

【参考】
クリーンウォーターシステム(CW) – クリーンウォーターシステム(CW) | ヤマハ発動機 (yamaha-motor.co.jp)
事業概要 | 三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社 (mcas.co.jp)
【SDGsと水ビジネス】最先端の浄水技術が途上国の水問題を解決する (newspicks.com)
世界の水不足解消に役立つ!?世界も注目 夢の給水機 | NHK
株式会社MIZUHA|飲料水の革命的ソリューション 空水機 (mizuha-nippon.jp)
株式会社 Sunda Technology Global (sundaglobal.com)
緩速ろ過方式について – 三原市水道部 (mihara-waterworks.jp)

 

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