日本における上水道の普及率は、98%と言われているのをご存じでしょうか。私たちの生活において、蛇口を捻れば浄化された水が使えること、スーパーやコンビニで綺麗な飲み水を購入できることは当たり前となっています。
しかし、世界には、安心して飲める水が身近にない人々が6億6,300万人もいるといわれています。
下記のマップは、安全な飲料水へのアクセスの度合いを示しています。
他の地域と比較すると、サブサハラアフリカの多くの国で、安全な飲料水へのアクセスが乏しいことがわかります。
JMP (washdata.org)より引用
安全な飲料水へのアクセス不足が生み出す社会課題
安全な飲料水へのアクセスが乏しい地域に居住する人々は、池や川、野ざらしの井戸など飲用に適さない水源に頼っているため、泥や細菌、動物の糞尿が混ざっている汚水を飲料水として使用します。浄水処理をせず飲むことで、抵抗力の弱い子供は下痢を起こし、汚水を主原因とする下痢で命を落とす乳幼児は、年間30万人、毎日800人以上といわれています。
また、子どもに限らず、大人も、下痢症を発症し脱水症状に陥ったり、メジナ虫病(*1)・結膜炎にかかったり、コレラの蔓延に繋がったりと様々な健康被害を受けています。
*1:汚染された水の中に住むメジナ虫の幼虫や、卵を持つケンミジンコを体内に取り込み、それらの虫が体内を動き回ることで、筋肉や内臓が傷つけられます。1年経った頃に肌を食い破って出てきますが、根本的な治療法はなく、鎮静剤を飲んで痛みに耐えるしか術がありません。
不衛生な水でも生きるために飲まなければなりません。
水源が近くにない場合は、たとえ不衛生であっても、遠くまで水を汲みに行く必要があり、子どもがその仕事を担っているケースが多くあります。
どんなに汚くてもこの水を飲むしかない…。 | 日本ユニセフ協会 (unicef.or.jp)
まだ外での賃金労働ができない幼い子どもたちは、家庭内での重要な労働力とならざるをえないのです。サブサハラアフリカだけでも、330万人を超える子どもが、水汲みのために毎日長い距離を往復しています。
水の入ったタンクは、かなりの重さになるため子どもには重労働です。
加えて、家族の分の水を確保するために、何度も往復する必要があるため、1日に8時間以上を水汲みに費やしている子どももいます。
このような水汲みは、学校に行く体力と時間を奪ってしまうため、本人が勉強したいと望んでも教育を受ける機会が損なわれてしまいます。この状況は、個人だけでなく国の発展を虐げているといっても過言ではありません。
アフリカの都市部でも起こる水不足
水不足というと、インフラや設備が十分でない村落部で起こっていることのように思われがちですが、実は、近年のアフリカでは都市部の水不足が問題となっています。
主な原因は、都市部の人口が急激に増加していることです。
国連の都市人口予測によると(下記グラフ)、特にアフリカの主要都市は人口が増加傾向にあります。2035年には、エジプトのカイロは2,900万人(世界5位)、コンゴ民主共和国のキンシャサは2,700万人(7位)、ナイジェリアのラゴスは2,400万人(11位)の予測で、世界有数の人口が多い都市になるとされています。
人口増加にみるアフリカ市場の可能性と課題 | 地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 – ジェトロ (jetro.go.jp)より引用
この急激な人口増加に対し、水道の整備や改修が追い付いていません。その結果、安全な水にアクセスできる人の割合が、村落部では上がったのに都市部では横ばい、あるいは下がっている、といった状況が生まれています。
国によって問題は様々です。
例えば、高低差の激しい地形では、水を送るために水道管に装置を設置し、細かく水圧を管理をする必要がありますが、そうした対応が不十分な場合、圧力が高いために水道管が破損して漏水してしまうことがあります。、また、道路整備などのインフラが優先され、漏水の補修が後回しになってしまったり、メーターが設置されていないために料金を徴収できないなど、様々な課題が存在します。
水道の設置に加え、適切なアフターメンテナンスや、確実な料金の徴収を実施することが、アフリカが今後直面するであろう都市部の水不足に対する解消の糸口となるのかもしれません。
JICAも衛生的な水と、そのアクセス改善について長年取り組んでおり、近年はDX(デジタル・トランスフォーメーション)を活用した適切な水管理にも期待を寄せています。既に海外協力隊の中では手押し式井戸の料金をモバイルマネーのプリペイド方式にしたり、QRコードで修理履歴がわかるようにしたりと、草の根レベルからDXが進みつつあります。
46年ぶりに開催された2023年国連水会議
2023年3月22日から24日まで、ニューヨークで「2023年国連水会議」が46年ぶりに開催されました。
歴史的な国連水会議、世界的な水危機と水の確保に対処する分岐点となり、閉幕(2023年3月24日付プレスリリース・日本語訳) | 国連広報センター (unic.or.jp)
会議では、緊急に対応が必要とされる強制移住、気候変動、紛争の要因としての水の危機から、健康、貧困削減、食料安全保障との関連性まで、幅広く議論が行われました。
解決策についても関心が集まり、水量に関するデータ収集の改善や、ガバナンス制度の強化、能力構築の機会、そして水部門における資金不足なども議論されました。
また、年間1,820億から6,000億米ドル超の資金が必要とされている中、資金調達と、革新的な手段の重要性が強調され、新たなイノベーションと大規模な投資が呼びかけられました。
本会議で策定された「水行動アジェンダ」には、水危機にある世界から水が確保された世界への変革を推進するため、各国政府を含む様々な団体から700を超えるコミットメントが集まりました。このアジェンダは、より協調的に水に関する課題に対処するという、国際社会の大胆な決意を表しています。
本会議において、アフリカ連合は、アフリカの水投資に関するさまざまなイニシアチブを通じて、2030年までに少なくとも年間300億米ドルを拠出し、水分野における投資不足を改善することを目標に掲げました。
SDGsのスローガンである「誰一人取り残さない」を水分野において達成するためには、都市部はもちろん、地方の村落まで安全な飲料水を行き渡らせる必要があります。今回の国連会議がその第一歩となることを期待します。
【参照】
●一筋縄ではいかないアフリカの水問題に、情熱とチームワークでインパクトを起こす【国際課題に挑むひと・3】 | 2022年度 | トピックス | ニュース – JICA
●どんなに汚くてもこの水を飲むしかない…。 | 日本ユニセフ協会 (unicef.or.jp)
●水の課題 | 水・衛生専門のNGOウォーターエイド (wateraid.org)
●グローバルな水問題2003_01d.pdf (jica.go.jp)
●人口増加にみるアフリカ市場の可能性と課題 | 地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 – ジェトロ (jetro.go.jp)
●アフリカの水が汚れている、衛生環境が悪い理由は?解決するための支援活動は? (gooddo.jp)
●歴史的な国連水会議、世界的な水危機と水の確保に対処する分岐点となり、閉幕(2023年3月24日付プレスリリース・日本語訳) | 国連広報センター (unic.or.jp)
ぜひANZAまでお問い合わせください。
AAICが運営しております。
AAICのこれまでのアフリカでのプロジェクトは
こちらからご覧いただけます。