2015年9月の国連総会で採択された持続可能な開発目標(SDGs)は、前目標である国連ミレニアム開発目標(MDGs)では実現できなかった民間セクターとの緊密な連携を重視したことで、近年、公共や社会セクターのみならず、民間セクター間でも広く浸透してきている。
SDGsでは17のゴールが設定されているが、その中でもヘルスケア分野の目標は、SDG3(すべての人に健康と福祉を)が設定され、ユニバーサルヘルスカバレッジ(Universal Health Coverage: UHC)の達成である。
UHCの定義は「すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられること」とされる。
また、世界では2000年以降のヘルスケア分野への一人あたりの医療・健康への支出総額は図のように増加している。その増加は、サブサハラアフリカおいても、同様で、ヘルスケア分野への支出増加が顕著になっている。
セネガルにおけるUHC達成状況
このような背景のもとで、UHC達成にむけて、セネガルはその歩みを進めている。
セネガルは、2015年までMDGsに沿って保健分野の取り組みを進めてきたが、2015年時点で5歳未満児死亡率が47(出生干対)、妊産婦死亡率が315(出生十万対)と、MDGs(5歳未満児死亡率:同44、妊産婦死亡率:同127)達成に至らず、依然として地域聞や経済水準による格差も存在している。
これらの指標の改善が十分進んでいない背景には、特に地方部等で保健医療施設の数が十分でなく自宅から施設までの距離が遠いといった物理的アクセスの課題と、保健医療サービスの利用者が医療費を負担できないという経済的アクセスの課題がある。
そのような背景のもと、セネガルは保健医療サービスの量の拡大と質の向上を通じた物理的アクセスの向上と、医療保障制度の拡充を通じた経済的アクセスの向上によるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に向けた取り組みを進めている。
セネガルの開発戦略「セネガル新興計画(PSE 2014-2018)」及び「国家保健開発計画(PNDS 2009-2018)」は、保健システムの強化と社会的弱者に対する医療保障の拡充等を優先課題に位置付けており、2013年にはサル大統領のイニシアティブの下で2022年までのUHC達成を目標に掲げる「国民皆保険開発戦略計画2013-2017(CMU戦略)」が策定された。
また、2015年には医療保障庁が設立され、保健共済組合を通じたインフォーマルセクター向けのコミュニティ健康保険の展開、無料医療制度の強化、医療保険組織改革を目指した他セクターとの協働に重点を置いた取り組みを行っている。
日本でのUHCと外交戦略
日本では、UHCは早くに達成され、その取り組みを国際社会に広げている。
日本のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)への歩みは1927年に一部の被用者に対する公的保険制度を導入することで始まった。その後、徐々に被保険者の範囲を広げ、1961年4月に国民健康保険法が全面的に改正され、すべての国民が加入する公的医療保険が確立した。この国民皆保険制度が、早期にUHCを達成し、日本の世界有数の健康寿命につながったといえる。
近年では、2016年に、G7伊勢志摩サミット・G7神戸保健大臣会合において、日本は、G7として初めて首脳級の会談でUHCの推進を主要テーマに設定し、国際社会・国際機関と連携して、アフリカ、アジア等でのUHCの確立を支援すること、さらに国際的議論において主導的な役割を果たしていくことを表明している。
セネガルにおけるUHCとデジタルヘルスの活用
UHC にテクノロジーを活用することには大きな可能性があるといわれている。
医療部門は、データ集約型であるという性質上、分析にテクノロジーを使用して、健康状態を改善し、公衆衛生上の危機に対応し、リソースを効率的かつ公平に配分するのに適している。デジタルヘルスを活用してUHCへの道を歩む取り組みは、さまざまな形で行われてきている。
例えば、セネガルでは、生体認証システムを使って、より医療費償還に関連する決済を迅速に進める取り組みが行われている。
セネガルは、デジタル保健分野における戦略・計画について 2019 年に「Plan Stratégique Santé Digitale 2018-2023」にビジョンを策定し、翌年 2020 年にビジョンの具現化を目的に省内で議論を重ね 6 分野におけるプログラム案「Programme de Digitalisation du Sector de la Santé」を立案した。
その6つの分野は以下の通りである。
①遠隔医療
②医療施設間の情報システム
③地理的な保健医療情報
④医薬品の管理
⑤電子カルテの普及
⑥全国ヘルスポストからの情報のデジタル化(医薬品の在庫 や医療器材管理等を含む)
2021年からは、上記6つのプログラムを実施するための保健情報管理システムというプラットフォームの構築準備を進めている。
医療保障情報統合管理システム(SIGI CMU)は、機能として以下の6つのコンポーネントから構成されている。
- 医療保障加入者の生体認証システム(SIBIO)
- クラウドファンディングシステム及び電子決済(SUNUCMU)
- 加入者個人用モバイルアプリ (SAMACMU)
- 医療保険事務システム(GESTAM)
- 診療報酬請求電子処理システム(SITFAC)
- データベース(Datawarehouse)
このシステムが導入されると、個人の収入データと相互運用され、応能負担による保険料の算定が可能となり公平な負担となることで(一律の定額保険料から、収入の多い人からは高い保険料、低い人は定額のままか収入に見合った保険料の設定)財源も安定し、それにより給付される医療サービス内容も徐々に充実していくことが予想され住民も恩恵を享受できる。
このような取り組みの中で、日本のデジタルヘルス技術や国民皆保険への制度設計に対する支援が望まれている。
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出典:
JICA – セネガル国国民 ID デジタル化推進支援検討にかかる情報収集・確認調査
United Nations Economic Commission for Africa – MDG Report 2015
World Health Organization – Global Health Expenditure Database
World Health Organization – Universal Health Coverage
厚生労働省 – 日本とWHO
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