アフリカ市場で成功の機会を見つけるためのサービス作りに挑む。

2020.08.20
株式会社STANDAGE取締役副社長 大森健太氏
アフリカ市場で成功の機会を見つけるためのサービス作りに挑む。


ANZAでは、株式会社STANDAGE共同創業者兼取締役副社長大森健太氏に、ご自身のアフリカでのビジネスと想いについてお話を伺いました。

―はじめに貴社の事業概要についてお聞かせください。

我々の事業は一言で言うと、「日本の高品質な製品やサービスに特化した越境EC・デジタル展示場」です。DiGiTRADという弊社のデジタルプラットフォームを使っていただくことで、今までより簡単に世界の市場に対して製品を展示・販売することができます。5分で商品の掲載が可能となるインターフェイス、英語が話せない方でも翻訳機能を使いながら条件交渉をまとめられる、暗号通貨を土台とした決済システム等により、顧客となる日本企業様の海外市場での貿易ビジネスへのハードルを下げることができます。日本市場のみに留まっている高品質な製品やサービスを新興国市場に届けたいという想いのもと、現在はアフリカ、特にナイジェリアに注力して事業を展開しています。

―数ある世界の新興国市場の中でなぜアフリカという市場を選択したのでしょうか。

アフリカが今後世界で一番成長が見込まれる市場で、且つまだ日本のプレゼンスが大きくない市場だと考えたからです。BRICsやASEANの新興市場も未だに成長は続いているものの、アフリカほどの大きな伸びが今後も期待できるかというと難しいと思っています。またこれらの市場にはすでに多くの日本企業が参入しています。一方アフリカは「市場の成長」と「日本企業のプレゼンス」のギャップが非常に大きな市場であると感じました。このギャップこそが、我々にとってはOpportunityだと思い、アフリカでの事業を本格的に検討するようになりました。

元々、漠然とアフリカに興味を持っていたものの、当時の私にとっては未開の地でした。そこで色々と調べてみたところ、大きな可能性を秘めた市場であることがわかり、GDPや経済成長率などのマクロ指標を基にナイジェリアや南アフリカ、エチオピアなどにチャンスがあるのではないかと考えるようになりました。

そのような中で、ある日本企業が主催したアフリカビジネスセミナーに参加した際にナイジェリア人と出会い、そのご縁からナイジェリアでビジネスを起こすことを決めました。2017年3月に日本法人を設立し、同年秋にナイジェリアに現地事務所を設立しました。

―新型コロナウイルスの影響で出張に行けなくなってしまったと思うのですが、そのあたりで何か変化はありましたか。

コロナ以前は、ほぼ毎月ナイジェリアに出張に行っていたものの、正直なところなかなか思ったような事業の成長ができていませんでした。1か月に1回の限られた出張期間の中だけで現地のスタッフとコミュニケーションを取ってもなかなか踏み込んだ議論はできず、ポジティブな面を強調した報告がされるだけでした。可能性のないことも可能性があると言ったり、できないことをできると言ったりするので、真実を見極めることに苦戦していました。

そのような中でコロナが深刻となり出張に行けなくなり、リモートで現地法人の進捗管理をしなければならなくなったため、日本オフィスに専任の担当者を置くことを決めました。週3回のリモートミーティングを設定し進捗管理を徹底するようになったことが功を奏し、現地法人の売上が伸びるという思いもよらない結果がでました。出張による現地現物も重要ですが、同じくらいリモートであっても質の高い高頻度のコミュニケーションが事業の成長には不可欠だと改めて感じる機会となりました。


―越境ECプラットフォームDiGiTRADをアフリカ向けにローンチされて意外だったことはありますか。

ローンチ当初は、アフリカ市場で売れる日本製品を考えたときに、ヒットしそうなものというと車くらいしか予想がつきませんでした。しかし、事業を進める中で、楽器やウィッグ、加工食品や日本酒などのハイエンドな嗜好品等にもニーズがあることがわかりました。またmade in Japanの製品だけでなく、日本で適切なメンテナンス等が行われて使用されたused in Japanの中古機械も人気です。このように実際に事業を開始したからこその発見も多くあり、現在は高級品と中古品に力を入れています。

―大森さんの起業前のお仕事について教えてください。

起業前は新卒で伊藤忠商事株式会社に入社し、化学品の部門で医薬品関連の部署で働いていました。もともと大学と大学院でがんの研究を行っていたことから、ヘルスケア関連のビジネスに携わりたいと思い、希望通り同チームに配属されました。

配属当初、(幸運なことに?)新設されたばかりのチームで、メンバーがチーム長と私のみだったため、入社後すぐに新規開拓の営業を任されました。実際に、パートナーである日系のメーカーさんとコラーゲンゼリーを製造し中国で販売したり、中国でのM&A案件を担当したり、幅広い種類のビジネスを体験できた事は、今の事業にしっかり活きていると思います。

―起業を決意したきっかけは何でしょうか。

伊藤忠時代、個人で不動産への投資を行ったり、保険販売の資格を取得したりしていました。また、輸入ビジネスを個人でやっており、その際に、AmazonなどのECのプラットフォームを使って商品を販売していました。その経験の中で、楽天やAmazonなどのtoC向けのECプラットフォームは非常に体系化されていて、誰でも販売できるわかりやすいものになっている一方で、商社でやっているようなtoB向けの販売はプロセスが非常に複雑だということに気が付きました。

この発見を何か自分の事業の形にできないかと思い、30歳になる年だったこともあり、自分の人生を賭けて起業に挑戦してみようと、飛び出してみました。

―周囲からの反対はなかったのでしょうか。

もちろんありました。特に父親からの反対が大きかったです。

企業勤めから事業を起こした人だったこともあり、父からの言葉は非常に印象に残っています。

「新卒で日本の超優良企業に勤めているということは、エレベーターで東京タワーの展望台に連れてきてもらっているようなもの。ここでも十分高い位置にいるのに、さらに上を目指して起業をするということは、エレベーターで上がってきた分をわざわざ下りて地上へ戻り、今度は自分の力で階段を一から登らなければならない。」

この言葉は自分の心の中に強く焼き付いたものでした。実は当時、「起業が上手くいかなかったらサラリーマンに戻ればいい」と思っていて、父親を安心させるためにもその気持ちを伝えましたが、「そんな気持ちがあったら絶対うまくいかない。すべてを捨てる覚悟で臨まなければならない。」と忠告してくれました。当時はその言葉の意味を全て理解していませんでしたが、今身に染みるほどよくわかります。

―そんなお父様からのアドバイスを聞いたうえでアフリカを選択されたのには何か理由があるのでしょうか。

アフリカに飛び込んでみたのは、どうしたら「差別化」できるのかを考えた結果です。これまでの前職での経験でいうと中国や東南アジア市場に知見がありましたが、同時に競合もたくさんいることを認識していました。アフリカであれば、日本でも多くの人が未だ知らない市場であるため、私と共同創業者である足立の機動力を生かしてビジネスを大きくできるチャンスがあると考えました。

―実際に事業を進めるうえで感じたアフリカならではの難しさを教えてください。

アフリカといっても国によって文化は大きく異なるので一概には言えませんが、ナイジェリアにおいては特に、何が真実か見極めることは非常に難しいと感じています。前日に「お金を払う」と約束していたのに翌日ふといなくなってしまったり「上手くいかないことも上手くいく」と言ってきたりだとか、言っていることと真実が異なることが多々あります。アフリカでビジネスを行っている方であればみなさん同じような経験をされていると思いますが、そのような状況の中で、正しい判断をするための公式やマニュアルはなくケースバイケースでの対応が求められます。最近少しずつその勘を掴んできた実感はありますが、やはり今でも模索している状態です。

―逆に魅力や楽しさは何でしょうか。

スピード感だと思います。国によってはビジネスを進めるうえで不利な規制がある場合もありますが、実際に話してみると規制の範疇を超えて「とりあえずやってみよう」となることがあります。そこは日本と大きく異なる点であり、アフリカの面白さだと思います。

ナイジェリア以外にも例えば我々はルワンダでビジネスを行っておりますが、ルワンダで政府関係者と面談をした際、すぐに新規事業の実証実験を開始することができました。これがもし日本であれば、ゴーサインをもらうまでに半年ほどかかるので、このスピード感で進めることができるのは大きな魅力だと思います。ただ一方で我々のビジネスはアフリカと日本企業様を繋ぐ仕事でもあるので、日本側とアフリカ側のスピード感を調整するということも大切な要素になります。日本の伝統的な組織や会社ですと、なかなかアフリカのこのスピード感についていく、調整していくというのは正直難しさがあると思います。その点、弊社はスタートアップやベンチャーのスピリットを持って柔軟な対応ができるのは強みとなります。出資してくださっている投資家(日本企業)の方からも、その点を評価して頂いていると感じます。


―今後の事業展開を教えてください。

現在、アフリカに進出している日本企業は拠点数ベースで500~600で、中国・東南アジアなどと比較するとまだまだ少ないため、1社でも多くの日本企業様に弊社のプラットフォームを利用していただき、スピード感を持って日本ブランドを浸透させることが重要だと考えています。実際にどの製品がどの国の市場でヒットするのか不透明な部分はありますし、売ってみないとわからないというのは我々も感じているところです。だからこそ、最初から製品等を絞らずに可能性を広げながら、テストマーケティング的に「とりあえず売ってみる」ができる越境EC・デジタル展示場の強みを生かしたプラットフォームを作っていきたいです。

現在はナイジェリアが中心ですが、来年にはエチオピアやコンゴ民主共和国、タンザニアなどのアフリカの主要国をカバーし、3年後にはアフリカに限らず中南米や東南アジアなど新興国全般をカバーしたいと考えています。

今回のコロナで、現地のことをわかっている信頼できるローカルパートナーを巻きこむことができれば出張に行かなくとも上手く事業を進めることができると学びました。実際にナイジェリアの現地法人を統括しているナイジェリア人は27年間日本に住んでいた経験があり、奥さんも日本人であるため、現地のことはもちろん日本のこともよく知っています。そういう人材を他国でも見つけられるかが大きなポイントだと思います。

―アフリカ進出を検討している日本企業にメッセージをお願いします。

みなさんの中にはアマゾンやメルカリで出店してみると、意外なものが売れるという経験をされた方がいらっしゃると思います。他の商材でもあって、売り先がアフリカなどの新興国であっても、それは同じで、思いもよらないところにニーズが潜んでいる可能性があります。

私自身がそうであったように、現地に足を運んだことがない人が思っているアフリカと実際のアフリカは大きく異なります。経済成長と人口増加、生活のデジタル化などもあり、以前と比較して消費者のニーズは多様化してきています。高品質な製品・サービスと現地で良いパートナーを持っていれば、売れる可能性が十分あります。

ぜひアフリカ市場参入の第一歩として、我々のサービスを活用して最小限のコストで、アフリカ市場での成功の機会を見つけて頂きたいと思います。

―本日はありがとうございました!

創業者自身の総合商社での貿易実務の経験とプロセスのデジタル化を融合させたユニークなプラットフォームを基盤にアフリカで事業拡大をする株式会社STANDAGE。多くの日本企業と同じように、フラットに世界の新興市場を見つめ、アフリカにビジネスチャンスを見出し、事業を進めていく大森さんの姿勢が多くの日本企業のアフリカ進出を後押しすると感じました。

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