「品質がいい」と胸をはれるケニアのバラで、笑顔を広めたい。

2019/09/25
萩生田愛さん

AFRIKA ROSE創業者(株式会社Asante代表) 
萩生田愛さん

「品質がいい」と胸をはれるケニアのバラで、笑顔を広めたい。

萩生田愛(はぎうだ・めぐみ)さんはアフリカ産のバラを扱う花屋「AFRIKA ROSE」のオーナー。赤道直下のアフリカ・ケニアで力強く育った、色鮮やかで大きなバラを輸入・販売しています。現在は、六本木ヒルズと広尾に店舗を持ち、オンラインでもバラを販売しています。当サイトANZAでは、萩生田さんのアフリカとの出会い、「AFRIKA ROSE」を始めるきっかけについて語っていいただきました。

―アフリカのために“何かをしたい” ……忘れかけていた思いを胸に現地ケニアへ

アフリカに興味を持ったのは、大学時代。模擬国連に参加した際、世界の貧困問題について考える機会があり、アフリカのために何かできないかと考えたことがきっかけです。「アフリカの貧困問題を解決したい、何かやらなくては」という使命感を持ちました。その漠然とした“何かをする”を実現するためには、まず社会人としての経験や自立が必要だと考え、大学卒業後は民間企業に就職することにしました。

社会人になると、仕事が楽しく毎日が充実しており、気が付けばアフリカへの思いが薄れつつもありました。しかし、社内でアフリカに薬剤を無償提供するプロジェクトが発足され、これをきっかけにアフリカへの想いが再燃。このまま企業で働き続けることに違和感を持つようになりました。安定した会社の中でそれなりにできることをするべきか、自分がやりたいことをするべきか、悩む日々が続きました。

しかし「一度自分の目でアフリカを見たい」と思い、一念発起。仕事をやめてアフリカ大陸のケニアに行くことを決意しました。初めてアフリカの地に立ったのは、2011年7月です。

―ケニアのバラとの運命的な出会い。鮮やかさと生命力に感動。

ケニアに訪れてすぐのこと、ナイロビのショッピングモールの花屋で、初めてケニアのバラを見ることとなりました。実は、私は生け花の草月流の師範であることもあり、花が大好き。一瞬でケニアのバラに心を奪われました。ケニアのバラは日本のバラとは異なり、大きく色鮮やかな、個性的な柄をもつのが特徴です。そして茎が太く、日本のバラの1.5~2倍の太さがあります。バラが長持ちするかどうかは茎の太さによることから、ケニアのバラの生命力を見て取れます。力強く、美しく咲く姿に感動しました。

この時点では、まさか自分が花屋になってケニアからバラを輸入することになるとは思ってもいませんでしたが、今後の人生を左右する運命的な出会いでした。

―「働きたいのに働けないことが貧困だ」 ケニアの人々に働く場を提供したいと起業を決意。

日本に戻る日が近づき、今後自分は何をするべきなのか考えました。現地に残り、ケニアにある現地企業に就職するのか、国際NGOに入るのか、イギリスの大学院で開発学を学ぶのか、それとも日本で企業のCSRとして途上国に関わるのか……考えられる選択肢を挙げてみました。

そのような中、ケニアの街の一角で、自慢げに生き生きとバラを販売する人々が目に留まりました。「俺たちの国のバラは世界一だぜ!」と、誇りを持ってバラを売っているのです。その時、ふと気が付きました。「働きたいのに働けないことが貧困だ」ということです。

ケニアは、アフリカ大陸の中でも人口が多く、インフラも比較的整っている場所。ケニア経済は成長を遂げているにもかかわらず、当時ケニアの青年失業率は40%ほどと非常に高く、ケニアのエリートが通うナイロビ大学を卒業しても、就職率は半分程度と低かったのです。

ケニアの実情を知った上で「ケニアの人々の働くところを増やしたい」、「ケニアに笑顔を増やしたい」と感じ、以前心を奪われたケニアのバラで起業したい、と強く思いました。そしてケニアからバラを輸入して、日本で販売するビジネスを始める決意をしました。

―ついに「AFRIKA ROSE」をスタート。できることをひとつひとつ行っていく。

まずは農園探しです。月500本から輸出してくれる農園を見つけるのは大変でした。児童労働、生産者が搾取されていない、環境に配慮した栽培を行っている、などの条件も併せて確認しました。現地の栽培や輸出のオペレーションに関しては既にバラの一大消費地である欧州を取引相手にしていたため一定品質のオペレーションシステムが出来上がっていました。現在では月曜日と金曜日に羽田空港に約1500本のバラが届きます。

よく、大変だね、と声をかけて頂きますが、誰でもできることをやっているだけだと思っています。最初は、空港での手続きに5時間くらいかかっていましたが、今では1時間くらいで終了します。税関の人はみんな親切なので、質問すれば教えてくれるのです。また、虫が出たら消毒が必要ですが、ケニアのバラは本当に品質が良いため、ほとんどそのようなことはありません。たまに注文した品種が届かないことはありますが、柄や色などは多少異なっても、本数を増やしたり、アレンジしたりと、その時々で対応しています。

日本における人材採用もうまくいっています。2,3ヶ月に1度「憧れの1日お花屋さん体験」を開催しています。実際に接客や水あげや花束づくりを体験してもらう機会です。参加者はAFRIKA ROSEのコンセプトにも共感し、そのまま手伝ってくれるケースが多いですね。繁忙期のみ単発で手伝ってくれている方もいます。

―「バラを持っている男性はカッコイイ」 バラを贈る文化を根付かせたい。

事業をスタートさせると、ある日本の現状に気が付きました。日本では花を贈る文化が少ないためか花の贈り方や受け取り方が上手でない方が多いのです。例えば、花を贈ることに慣れていない男性が「はい」とぶっきらぼうに花束を渡してしまうと、受け取る方は何の目的で渡されたのか理解できずに「いきなりどうしたの?あなた何かやましいことがあるんじゃないの?」と咄嗟に言ってしまうケースが多いようです。

これでは繊細な男性が傷付いてしまいます。花束を渡す時には「いつもありがとう」や「花が綺麗だったから」など理由をきちんと伝えることが大切です。そうすることで受け取る側は納得し心に余裕が生まれます。

一方で受け取る側は、自分を喜ばせようと花を買ってきてくれた相手に敬意と感謝を示し笑顔で喜んで受け取ることが大切です。

また、男性にとって花屋に立ち寄るというのは少しハードルが高いものと捉えられがちですが、AFRIKA ROSEではシンプルな内装や話しやすい男性スタッフがおり、花を買いやすい雰囲気づくりを心がけています。男性がもっと楽に楽しくバラを贈る文化を広めるため“ローズアンバサダー”というコミュニティーがあります。「バラを持っている男性はおしゃれで遊び心がありカッコイイ」と伝える取り組みです。男性限定のコミュニティーのメンバーは当初は、5名でしたが、今では250名を超えます。

―「AFRIKA ROSE」のファンは増加。 一方で、現地の雇用を増やすのは厳しい。

取り組みのおかげもあってか、「AFRIKA ROSE」のファンは増えています。バラをプレゼントされた人が、紹介でファンになっていく連鎖もできていて、嬉しい限りです。

一方で、最近の課題は「ケニアの雇用をもっと増やしつつ、生産者の生活や労働環境をどうしたらもっと改善できるのか」です。購入されるバラの本数が増えれば、アフリカ現地の雇用も増えていきます。

働く環境は、無料の食堂や無料の病院や近隣小学校への奨学金制度の導入など素晴らしく恵まれている環境がある一方、綺麗な水へのアクセスや保育施設の環境など課題は多いです。雇用も増やしつつ、こういった生活や労働環境を改善するサポートとコミットしていきたいと考えています。

―バラを通して日本人の心を豊かにしたい。

ケニアのバラは、強く大きく逞しくエネルギッシュでいて優雅で繊細、まさにケニアの女性のイメージです。女性らしさを活かしながら軽やかに働いている彼女たちの姿を見ていると、今の日本の私たちが忘れかけている「心の豊かさ」に気づきます。忙しさのためか心に余裕がなく、大切な人に愛情や感謝を伝える機会が少なくなっていないでしょうか?そんな中で願うことは、バラを通して「心の豊かさ」を思い出してもらうことです。特別な日ではなくても、大切な人に大切なことを伝えるためのきっかけとして、バラを利用してもらえたら嬉しいと思っています。