電子ゴミアート:廃棄物が生み出す新たな価値

2025.01.21
ANZA編集部
電子ゴミアート:廃棄物が生み出す新たな価値

前回の記事では、「電子ゴミの墓場」として知られているガーナのアグボグブロシー(Agbogbloshie)について紹介しました。先進国の急速なテクノロジーの発展の裏側で、環境問題や社会問題に直面している人たちがいる現実をお伝えしました。それと同時に、活動家、アーティスト、著名人、などさまざまな人々の活動を通じて、新たな解決や改善に向けた道筋が見えてきていることも事実です。

今回は数ある活動の中でも、電子ゴミアート(E-waste Art)に注目し、どのような社会的影響を与えているのかを探ります。

電子ゴミアートとは?

電子ゴミアートとは、廃棄された電子機器を素材として再利用し、アート作品や実用的な商品を生み出す活動を指します。視覚的な魅力だけでなく、アート作品を通じて環境問題への意識と電子ゴミリサイクルへの意識を促しています。

また、電子ゴミの環境問題、労働問題を解決すると同時に、社会的価値を付加することもできます。リサイクルやリメイクの枠を超えて、アップサイクル商品として本来は捨てられるはずの電子ゴミに新たな価値を与えて再生することで、製品のアップグレードをすることが可能です。

注目すべきアーティスト

それでは実際にどのような人がどのようなアーティスト活動を行っているのでしょうか…?

今回はガーナで活動しているお二人を紹介します。

1.ジョセフ アワー ダルコ (Joseph Awuah Darko)さん

ジョセフ アワー ダルコさんは2017年に非営利団体「Agbogblo. Shine Initiative」を共同設立した、ロンドン生まれガーナ育ちの起業家です。ガーナ、アクラの大規模な電処理場であるアグボグブロシーにて、電子ゴミを高級家具に作り変える、電子ゴミの焼却の代わりに電子ゴミアートを制作するように若い労働者に対してトレーニングを提供、などと革新的な取り組みを行っています。既に2000個以上の電子ゴミアートを制作しており、現地の環境問題、社会問題に直接影響をもたらしています。

画像出典: Tackling Ghana’s e-waste problem – Awuah-Darko’s story

彼の代表作の一つとして、車の車軸、アルミニウム、壁がけ時計、を素材に作られた柱時計があります。この活動は、SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」に沿った取り組みで、2018年には西アフリカビジネスエクセレンスアワードで「Most Promising Social Enterprise」を受賞しました。彼はこの活動を通じて、電子ゴミを新たな命に変えることで、地球環境と労働環境の双方を改善することを目指しています。

2.長坂真護(Mago Nagasaka)さん

長坂真琴さんは、電子ゴミの環境問題と貧困解決に取り組んでいる日本人アーティストです。アグボグブロシーにて破棄された電子ゴミを用いてアート作品を制作し、その売り上げを現地の環境改善と雇用創出に還元しています。

2017年にアグボグブロシーに訪れたことをきっかけに、電子ゴミアートの制作を始め、2年間で総額18億円以上を売り上げました。この資金を活用し、850個のガスマスクを現地の労働者に配布、スラム街初の学校を設立、2019年に電子廃棄物美術館を開館など、さまざまな社会活動をおこなっています。2022年には「MAGO MOTORS JAPAN株式会社」を設立し、リサイクル事業、農業、EV事業を通じてガーナの環境・貧困問題の解決に取り組んでいます。

長坂 真護 Profile

PROFILE – MAGO GALLERY ONLINE

E-waste アートの社会的影響

1.社会課題へのアートの活用 ‘Sustainable Capitalism’

電子ゴミアートは、環境問題や社会課題への革新的なアプローチを提供しています。長坂さんの場合、’Sustainable Capitalism’(サステナブル・キャピタリズム)の概念を提唱し、アートを通じて全ての社会問題に取り組むアプローチをサポートしています。このアプローチは、「単なる表現としてのアート」ではなく「社会変革のツール」としてのアートへと視点を広げるものであります。

2.Repair(修理)文化の重要性

また、電子ゴミアートは「修理すること」の重要さの見直しにもつながります。電子ゴミを芸術作品の一部として使うことで、捨てられたものにも新たな価値があることを示しています。

この考え方を支持するクルゼンさんは、「アフリカでは、人々はまだ修理が大切だと考えています。捨てないでください。まだ何とかできるはずです」と指摘しています。彼女は’E-WASTE IN GHANA Tracing Transboundary Flows’というフォトジャーナリズムプロジェクトを共同で立ち上げ、電子ゴミ問題の光と影の両面を報道することを目標としています。アグボグブロシーに住んでいる人々に焦点を当て、電子ゴミの可能性と、それらがもたらす環境・社会問題をともに描いています。電子ゴミアートを通して、「捨てるよりも修理して使う」というrepairの考え方を促進しています。

まとめ

電子ゴミアートは、ガーナの「電子ゴミの墓場」として知られるアグボグブロシーにおいて、新たな価値を生み出す取り組みとして注目を集めています。この活動は、アートを通じて環境問題や社会課題に挑むクリエイティブな可能性を示し、同時に修理文化の重要性を再発見する機会を提供しています。

アーティストたちは、廃棄物を単なるゴミではなく貴重な資源として捉え、これを活用した作品や活動を通じて、環境問題に対する新たな視点と解決策を提示しています。その結果、持続可能な未来への道筋を示し、社会変革の可能性を大きく広げる力となっています。

【参考文献】

Tackling Ghana’s e-Waste problem

https://theclimateinsight.com/2021/07/10/tackling-ghanas-waste-problem-awuah-darkos-story/

Turning e-waste into art at Ghana’s toxic dump

https://www.arabnews.com/node/1215046/art-culture

Creating Art from E-waste: When Technology Meets Creativity

https://itrecycle2020.medium.com/creating-art-from-e-waste-when-technology-meets-creativity-30e9d114b6a1

世界を変えるアーティスト、長坂真護の挑戦

https://numero.jp/interview191/

Nagasaka Mago Profile

https://magogallery.online/pages/profile/

 

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