長年続く民族間の対立や、周辺国との紛争解決に取り組んだアビー・アハメド首相が昨年ノーベル平和賞を受賞したことで話題となったエチオピア連邦民主共和国(以下、エチオピア)。
そんなエチオピアがどんな国なのか、今回は見ていきたいと思います。
エチオピアの基本情報
以下、エチオピア基本情報をまとめました。
面積:109.7万平方キロメートル(日本の約3倍)
人口:約1億922万人(2018年)
人口増加率:2.62%(前年比)
首都:アディスアベバ
民族:オロモ族,アムハラ族,ティグライ族等約80の民族
宗教:キリスト教,イスラム教他
通貨:ブル(BIRR)
※1米ドル=約29ブル(2019年10月現在)
言語:アムハラ語,オロモ語,英語等
続いて経済面。
名目GDP:843億米ドル(2018年)
一人当たりGNI:790米ドル(2018年)
GDP成長率:6.8%(2018年)
エチオピアはナイジェリアに次ぐ第2の人口大国です。また、インフラへの投資や農業・サービスセクターの発展に力を入れることで過去10年以上、2桁の経済成長を続けてきており、その成長率はサブサハラ・アフリカでは異例だとされています。同国は、2025年までに中進国入り(一人当りGDP1,000ドル以上)することを目標として掲げています。
また、冒頭でも紹介したアビィ・アハメド首相が2018年4月に就任して以来、大胆に政治や社会の改革を進めていることも注目点になっています。
アビィ首相が目指す「新エチオピア」の姿
アビィ首相は就任以来、以下の3点に力を注いでいます。
一つ目が、民主主義の定着と国民融和の実現です。
強権的な政権下で蓄積された国民の不満を解消するため、民主化のプロセスを再開し、数千人に及ぶ政治犯を釈放、亡命者の帰国を促し、政府がテロ組織に指定していた反政府勢力も合法化しました。
二つ目が、インフラの強靭化と製造業の強化です。
経済政策の基盤となるのが、メレス元首相の下で策定された国家政策「成長と構造改革計画(Growth and Transformation Plan:GTP)」。経済の軸足を農業から工業へシフトさせ、エチオピアの製造業を「アフリカのハブ」とすることを目標としています。
GTPの成果として、真っ先に挙げられるのが、大型インフラ開発。中国資本でジブチ‐アディスアベバ間の標準軌鉄道が完成し、さらにアディスアベバ市内の都市鉄道であるライト・レールの稼働が開始されました。
一方で、貿易赤字の拡大による外貨不足の問題が製造業の発展の足かせとなっています。アビィ首相は、今後3年間で外貨不足の原因となるボトルネックを解消、生産性を高める改革の実施を発表したものの、具体的な案については言及していません。
三つ目が、外交を通じた周辺国の安定の実現です。
アビィ首相は就任から半年を待たず、2018年9月にエリトリアとの和平合意を締結。続いて、エリトリア、ソマリア、エチオピア間の3カ国協力協定への署名、ジブチ、エリトリア間での国境問題の和解に向けた対話の再開、スーダン国内における和平仲介等、地域内の関係修復に着手しており、国際社会からも高く評価されています。
製造業に力を入れるエチオピア、それを支援する中国
前章でも触れたように、アビィ首相の政策軸の一つに農業から製造業へのシフトがあります。
2016年にはおよそ5%だった製造業のGDP貢献率を2020年に8%、2025年に18%まで高めることを目標に掲げています。特に繊維・縫製業や皮革産業といった軽工業、農産物加工業などを優先産業として定めており、工業団地の設立など海外企業を誘致することで産業を育成していく方針です。
海外企業がエチオピアに生産拠点を構えるメリットとしては、低賃金が挙げられます。ジェトロの調査によると、エチオピアの首都アディスアベバの一般工の賃金は月額およそ50~70米ドルとなっており、ベトナムのダナンやカンボジアのプノンペンなど東南アジアの都市と比較しても圧倒的に安く済むため、東南アジアの次に来る生産拠点として注目されています。さらに年齢別の人口においても、年齢が低くなれば低くなるほど構成比が高く若い労働力を手に入れやすいことがメリットとして挙げられます。
このように、国として製造業の育成を掲げ、海外企業の誘致に取り組んでいるエチオピアには、現在多くの中国企業が生産拠点を置いています。中国の大手靴メーカーである華建は2011年にエチオピアに最初の工場を建設、アフリカへ積極的に進出している携帯電話メーカー、テクノも2011年にエチオピアに工場を構えました。さらに、デジタル経済の構築に向けてアリババと提携したことでも話題になりました。
中国は製造業だけでなく鉄道や道路などのインフラ整備への投資、工事の請け負いを通じて、存在感を強めています。対エチオピア融資も2004年までほぼゼロだったのが、2005年に19億ドル、2013年には65億ドルに増加しました。
このような多額のインフラ投資を通じて債務国を政治的影響力下に置く中国のやり方に対しては、「借金漬け外交」と批判の声が大きく挙がっています。
日本企業の進出状況
中国のエチオピア進出は進んでいるものの、エチオピアにおける日本企業の進出事例は、2017年時点で12社と未だあまり多くありません。
しかし、エチオピア政府は日本企業の誘致に非常に積極的です。2015年にはエチオピア政府の強い要望でJETROオフィスがアディスアベバに開設されました。これに呼応するような形で、2017年にファーストリテイリング社が欧州市場への供給源として、生産拠点をエチオピアに置くと発表しました。(その後の動きは公表されていません。)
以上のように安価で質の高い労働力に目をつけて、世界的にも新たな製造業の生産拠点として注目されており、政府としても新たなリーダーの下、積極的に外資企業への誘致を行っています。その動きに合わせて将来的には所得水準も上がり、1億人を超える国の人口規模と合わせて巨大消費市場として大きな潜在性をもつのがエチオピアとなります。
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《参照》
2020年9月23日閲覧
『エチオピア連邦民主共和国 基礎データ』
『ノーベル平和賞にエチオピア首相 紛争解決に尽力』
『エチオピアが何故いま熱いのか【アフリカと日本』
『製造業に力を入れるエチオピア』
『日系企業向けエチオピア投資情報-ビジネスフロンティアとしてのエチオピア-』
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