背景まで楽しめるコーヒーをアフリカから日本へ

2020.10.09
合同会社シェトラトレーディング業務執行役員 大貝隆一氏
背景まで楽しめるコーヒーをアフリカから日本へ


ANZAでは、コンゴ民主共和国他東アフリカ産のコーヒー豆をダイレクトトレーディングで販売されている、合同会社シェトラトレーディング業務執行役員の大貝隆一氏に、ご自身のアフリカでのビジネスと想いについてお話を伺いました。

―はじめに貴社の事業概要についてお聞かせください。

弊社では、これまでアフリカでは例がない産地直送(ダイレクトトレード)のコンゴ民主共和国(以下、DRC)コーヒーの輸入・販売事業を展開しています。

世界的にDRCのコーヒーの知名度は未だ高くないものの、良質な豆が採れる地域です。

これまでの豊富な経験と専門的な知識、そして独自のネットワークと柔軟な対応力を活かして、皆様にその美味しさを安全に確実にお届けすることはもちろん、事業を通して、DRCの名前を広めると共にDRCと日本の良好な関係構築に貢献したいと考えています。

―アフリカ進出のきっかけは何だったのでしょうか。

きっかけは、ルワンダ出身の妻との結婚です。

当時は私自身あまりコーヒーを飲む人間ではなかったのですが、妻の淹れるコーヒーが苦くなく飲みやすかったことから、アフリカのコーヒーに興味を持つようになりました。

元々は百貨店の婦人コーナーで婦人靴を販売しており、アフリカとの繋がりはほとんどありませんでした。しかし、縁あってアフリカのコーヒーと出会い、一回限りの人生を賭けて「アフリカの高品質なコーヒー豆を日本に届けたい。」という想いが芽生え、2006年から事業を開始しました。

当時に比べると今はかなり多様化しましたが、当時は日本からアフリカのコーヒー豆を比較的小さなロットで輸入しようとするとヨーロッパを経由するのが一般的でした。これを直輸入するルートを作ることでアフリカの生産者、日本の需要家にとってもメリットとなるだろうと考え事業を開始しました。

―貴社の事業の歩みについて教えてください。

事業開始直後は妻の出身地でもあるルワンダ産のコーヒー豆を取り扱っていました。

販売予定であった焼豆を注文したところ、手違いで生豆が届いてしまったため、その生豆をコーヒーショップに持っていきました。すると、偶然コーヒーショップのオーナーさんがルワンダについてよくご存じの方で、その縁を通じて日本での販路を拡大していくことができました。ルワンダ側とは電話やメールでやりとりし実際にサンプルを送ってもらう、ということを繰り返し、比較的安定した品質が保たれるようになりました。

その後、ルワンダとの取引を聞きつけて、タンザニアのコーヒー農家からも直接依頼があり、タンザニア産のコーヒー豆の輸入に挑みました。しかし、サンプルと本体の品質が異なるなどの問題があり、継続するのは難しいと判断したため、取引を停止しました。その農園とは上手くいかなかったものの、その縁を通じて、キリマンジャロの別のコーヒー農園を訪問し、良質な農園と出会うことができました。

このように単体で見ると小さな取引ですが、その積み重ねが次の新たな縁を生んでいきます。タンザニアの次はDRCの在京大使からDRC産のコーヒー豆の輸入の依頼が来ました。産地直送の輸入を面白いと感じてくれたのだと思います。最初に紹介してもらった農家とは折り合いがつかず頓挫してしまったのですが、2つ目の農家からはつい最近サンプルが届き、スペシャリティのコーヒーのレベルに達してはいることが分かったため、取引開始に向けて準備を進めています。

―DRCのコーヒーの注目ポイントを教えてください。

DRCは生産市場としては大きく、さらに、キブ州で生産されているアラビカ種は非常に高品質です。

しかし、これらのDRC産のコーヒー豆の大半が「ルワンダ産」として世界に出回っています。

DRCにも輸出の仕組みはありますが、上手く機能していません。農園はDRC産のコーヒー豆として輸出するためには煩雑な輸出プロセスを踏む必要があるため、隣国のルワンダの個人的なつながりの業者に販売し即現金化することを好みます。

そこで私達が介入し、DRC産のコーヒー豆をDRC産として輸入することで、紛争地域でありながらも高級品を生産し直輸入しているという新たなインパクトを与え、消費者の方にコーヒーの背景まで楽しんでもらえると考えています。

最近では、フェアトレード、オーガニックコーヒーなども注目されるようになっています。この流れに乗ってダイレクトトレードのコーヒーの魅力、「買い手に作り手が見えるだけでなく、作り手にも買い手が見えること」を伝えていきたいです。

―アフリカ3か国で様々な活動をされてきた大貝さんが、DRCでビジネスをするにあたって難しいと感じることは何でしょうか。

DRCは金融規制の国といわれるほど規制が厳しい国です。なかでも良質なコーヒー豆が採れるキブ州は紛争の地でもあるため、送金などの手続きに非常に苦労しました。

また、できないことも「できる」という人が多いため、本当に実現可能なのかを見極めることが難しいです。完成したレベルが低い、期限を守らないなどの問題も多々あります。

しかし、原則悪気があってのことではなく、チャレンジしたい精神の現れ、と感じています。また、様々な人と会ってくれば、その後には本当に出来る人と出会えるものとも思っているので、私自身もそのような人々と出会い共に歩んでいく楽しみを感じています。

―大貝さんにとってのアフリカの魅力を教えてください。

冒頭でお話ししたように、アフリカと関わり始めたきっかけは縁が大きいのですが、それと同時に子どもの頃の自分が育った日本に似ている部分があるので、どこかなつかしさを感じ、それが自分を惹きつけていると思います。厳格なルールに縛られずに自由な発想でたくましく生きていけるのは、今の日本ではなかなか難しいことだと思います。

―今後の事業展開について教えてください。

これまでは様々な手続きを一人で行っていましたが、協力してくれる人が増えてきました。

直近では中国のモールに出店できることになり、さらにシンガポールでも前向きな動きが出てきています。

日本の高い焙煎技術や、DRC産のコーヒー豆の社会的バックグラウンドは海外で需要あるのではないかと予測しているので、越境ECを通じたアジアの他国への海外販路開拓に力を入れていきたいと考えています。

ルワンダ産のコーヒー豆から次々に広がり、コーヒーが世界を繋ぐ可能性が出てきました。そのように、一つの繋がりがあればそこから新たな可能性が生み出されるので、一つ一つの繋がりを大切にしていきたいと思っています。

鉱物資源を使った大規模なプロジェクトだけではなく、コーヒー豆を通じた国家間の小さな繋がりを上手く使って農園と共に成長していくことが私の願いです。


―最後にアフリカ進出を検討している日本企業にメッセージをお願いします。

多くの信頼と実績ある企業では、現地調査神話が根強いことと思います。未だ現地調査は難しい状況ですが、IT技術が発達し、現地とのやり取りは急速に進歩してきているため、今できる一歩を踏み出してみてください。

「アフリカは大丈夫か」という不安感を持たれがちですが、よくみれば日本と大差ないことに気が付くはずです。どこにも出来る人は少数いますし、出来ない人は大勢います。求めて探していれば、少数の出来る人と巡り会うことができると思っています。

―本日はありがとうございました!

ほとんど繋がりのないところから、一回限りの人生を賭けてアフリカに挑戦した大貝さん。様々な困難がありながらも時々の出会いを大切に一歩づつ前に進んできたその姿勢と、産地直送コーヒーへの想いが滲み出たインタビューでした。


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