「小さくやってみて事業基盤を作ること」がアフリカ進出のポイント!

2021.03.26
株式会社HAKKI AFRICA共同創業者 時田浩司氏
「小さくやってみて事業基盤を作ること」がアフリカ進出のポイント!

ANZAでは、ケニアでタクシードライバー向け自動車ファイナンスを行う株式会社HAKKI AFRICAの共同創業者を務める時田浩司氏に、ご自身の活動とアフリカの進出について伺いました。

ーはじめに貴社の事業概要をお聞かせください

ケニアでマイクロファイナンスを行っている会社です。

現在は主にUberドライバーに対して自動車購入のファイナンスを提供しています。

ケニアでは、ドライバーのほとんどが自家用車を持っておらず、現地の富裕層から車を1日1000円~1500円ほどでレンタルする場合が多いです。それを1年半から2年続けるとレンタル料金の総額は中古車を1台購入できるほどにもなりますが、借りる限りは支払いを続ける必要があるため貯金ができず、自動車購入のための頭金も払えなかったり、現地の銀行もUberで得た収入データを与信判断の材料として考慮していなかったりするため、ローンを組むことができません。ドライバーに安定的な収入があったとしても自動車を購入することが厳しいのが現状です。

ですが、ケニアの平均月収は4.5万円に対して、月に10万円の売上を上げるドライバーもいます。

そこで私たちは既存の信用情報によらない与信判断の方法として、Uberのサービス履歴・ドライバーの評価・GPS追跡・ドライブレコーダーデータ等を活用した信用スコアリングシステムを開発し、Uberで安定的な収入を得ているドライバーに融資を行っています。

ーケニアで事業をはじめるまでの経緯を教えてください。

私はケニアのナイロビで生まれました。父の仕事の都合で幼少期の多くの時間を新興国で過ごしました。日本に定住したのは、高校から社会人にかけてです。

20歳を超えた頃から漠然とアフリカでビジネスをしたいという思いを持ち始めました。

これまでは農業やインフラ分野などのプロジェクトに日本人が関わることが多い印象でしたが、今後はIT分野が著しく成長していくはずで、今までとは異なるアフリカへのアプローチができるのではないかと考えたのが始まりです。

ソフトエンジニアとして日本で実務を積み重ねていくうちに、キャスタリア株式会社の取締役CTOになり、JICAの中小企業海外展開支援事業を通じて年に3回ほどケニアに出張する機会がありました。当時からケニアは周辺国と比べると経済発展が進んでおり、インフラやネットもある程度普及していました。しかし、現地に適合したソフトウェアなどは発展の余地が多いにある印象だったので、ソフトウェアの開発ができるという強みを現地のビジネスで活かすチャンスだと思い起業を決心しました。

ちょうどその頃に共同創業者である小林とナイロビで出会い、同じくウェブ系で起業しようとしていることや、根本的には信用をどう可視化できるかという仮説を持っていたなど共通点が多く、意気投合しました。これがケニアで一緒に事業をはじめるきっかけです。

私がケニアに渡航する半年ほど前から共同創業者の小林が6つほどの事業を検証しており、その中でマイクロファイナンスの検証を行うタイミングでケニアに渡航しました。

結果的にマイクロファイナンスの市場の反応が想像以上に良かったことから事業はマイクロファイナンスに絞ることにしました。

ー当時からドライバーに対してマイクロファイナンスをしていたのですか?

最初はスラム地域で暮らしている露天商の方々などを対象に貸出していました。

当時はデータを集めることが狙いです。

例えば、信用に関するデータはもちろん、インフォーマルセクターの人たちがどれくらいの収入があり、どんな事業をしているのかなどのデータを集めていました。

はじめは必要な情報を集めるのに苦労したのですが、私たちがマイクロファイナンスのために情報を必要としていることが分かると、様々な情報を提供してくれました。1000円貸し付けることで得られる情報がたくさんありました。

そこから3ヶ月間で600人程度の方に少額融資をしました。モバイル決済サービスの「M-PESA」を活用することでオペレーションコストをある程度下げられたので、融資の効率化を模索していた時期です。

しかしCOVID-19の感染流行により、政府が個人の借金の返済に猶予をもたせるという通達が行われ、それまで99%だった返済率が、一気に下がりました。

その状況から脱却すべく新規事業を模索していくなかで、Uberのドライバーに注目しました。

調査をしてみるとドライバーは十分な返済能力があったとしても、非正規雇用であるというだけで銀行などから融資が受けられないという課題が見えてきました。ここに着目して2020年の10月から現在の事業に取り組んでいます。

ー信用スコアを独自で開発したとのことですが。どんな情報を集めたのですか?

業種別の収入・支出の状況や、返済状況の情報を集めました。

返済状況に関しては返済の期日をどれくらい守ってくれるかを重視しています。

期日をしっかり守ってくれる人に対しては融資の上限金額を上げるなどの方法をとっています。

独自で信用スコアシステムを開発したことで他社のブラックリストに載ってしまった人でも、信用スコアを着実に積み重ねていけば融資を受けられるようにしていきたいです。

ーUberドライバーへの営業活動はどのように行っていたのですか?

基本的には飛び込み営業と口コミです。Uberに乗車してドライバーにひたすら営業を行い、事業開始から1ヶ月で興味を持ってくれたドライバーが100人ほど集まりました。

また現地の人は検索サイトよりも、口コミを通して情報を得る人が多いので、Webマーケティングよりも飛び込み営業の方が現段階では効率的だと考えています。

ー事業を行う上で難しさを感じる場面はありますか?

中間管理職を育てることが難しいです。

基本的には私と小林で事業推進をしているので問題はないのですが、将来支店を増やす際にケニア人のスタッフだけでお金の管理やマネジメントなどを任せるとなると、そこまでの信用をお互い作れていないと思います。

過去には身を粉にして働いてくれたスタッフをマネージャーに昇格させたのですが、裏で不正を働いていたことが発覚したことがありました。努力できることと信用できることが別の話となってくるとスタッフの評価軸を決めることがとても難しいです。

不正ができない仕組みを自分たちで作った上でスタッフの人材育成を行っていきたいと考えていますが、簡単ではないです。

デスクの上に座っている男性たち

中程度の精度で自動的に生成された説明


ーアフリカで事業を行うことの魅力を教えてください。

肌感覚で国の成長やエネルギーを日々感じられることです。

あとは多くのことを試せる場でもあると思います。

私たちは金融業を行っていますが、日本で同じことをやろうとしてもライセンスの関係ですぐにはできません。良い面でも悪い面でもありますが、法体系が整いきっていないからこそできる挑戦もあると思います。

また、日本で1000万円使って事業をするのと、アフリカで1000万使って事業をするのでは、金額は同じでもできることが大きく変わってきます。

今後も成長が見込めるアフリカ市場で会社が成長していく過程はとても魅力的です。

ーこれからの事業展開についてお聞かせください。

直近の計画としては、ドライバーに向けた教育も行っていきたいと考えています。

実際に事業を3ヶ月ほどやってみてドライバーの事故件数が多いと感じました。多いときには1週間で3件もありました。

大体は保険でカバーされますが、事故が起きた時の対応を知らずに事故現場から離れてしまい、警察が対応してくれないこともあります。警察が対応してくれないと保険が適用されないので、ドライバーに向けて事故時の対応など講習を行いたいと思っています。

また、ドライバー間でも収入の格差があるため、相対的に高い収益を上げている人のノウハウを分析して、当社のサービスの利用者に提供できたらとも考えています。

もう少し発展的な計画としては、タクシードライバー以外の方々へどのようにサービスを広げていくかを検討しています。同じ自動車でも農機や運搬用のトラックなどいろいろありますが、業種に特化することで見えてくる信用を武器に、既存の金融機関には相手にしてもらえなかった方々に金融サービスを届け、貢献できたらと思います。汎用的な審査に通ることはできなくても、十分にその資格をもっている方々が様々な分野で存在していると確信しています。

ー最後にアフリカ進出を検討している日本企業にメッセージをお願いします。

実際に事業をやってみて感じたこととしては、最初に始める事業と事業拡大のフェーズで事業内容にズレがあっても良いということです。

日本とのビジネス環境が大きく違っていたり、情報が不足しているので正直やってみないと分からないことも多いです。いきなり大きく事業を始めるのではなく、小さく確実に利益が出せる事業を行うことでノウハウやデータを集め、その上で次の一手を考えていくのがいいのではないかと思いました。

実際、私の周りで事業が軌道に乗っているところも最初は小さく、スピード感持って取り組もうと考えている人が多いと思います。

まずは小さくやってみて基盤を作っていくことが進出のポイントになると思います。

本日はありがとうございました。

今回のインタビューでは時田氏が先を見通してデータやノウハウの蓄積をしながらアフリカでの事業を展開している印象を受けました。やってみないと分からないことが多いからこそ、色んなことを試してみることがポイントになってくると感じました。

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