前回はアフリカ大陸の穀物・イモ類生産量TOP10を品目別に紹介し、世界・日本のランキングと比較し、日本では穀物の構成比が大きくその内9割近くがコメであるのに対しアフリカはイモ類の構成比が大きいことが判りました。
今回はアフリカで生産量がトップの「キャッサバ」、「トウモロコシ」、それから日本人でも主食の「コメ」の3品目について、食文化や農業の背景などを交えながら紹介していきます。
1.キャッサバ
キャッサバは中南米原産のイモです。「タピオカ」の原料といえばみなさんも馴染みがあるのではないでしょうか。キャッサバのでんぷんは、日本では工業用でんぷん(食品、製紙、プラスチック、繊維、製薬、化学素材、他)として幅広く活用されています(日本では主にタイなどから輸入しています)。
キャッサバはアフリカの重要な主食の一つです。食べ方は様々で、茹でると繊維質が多く甘みの少ないサツマイモのような食感です(東南アジアでもふかし芋のようにして広く食べられています)。
また、乾燥させて粉にしたキャッサバを湯に加え、火にかけて練り続けたものは「ウガリ」「シマ」と呼ばれ、蒸しパンとお餅の間のような食感です(国・地域によって呼び方は様々です)。
そのまま、もしくはスープに浸して食べます。いずれの調理法でもシンプルな味で食べやすく、アフリカ各国で広く食べられています。
また、近年日本では、キャッサバの加工後の残渣をバイオマスとして利活用を研究する動きもあり、将来新たなエネルギー源として活用されれば、より身近になるかもしれませんね。
花王の事例
https://www.kao.com/jp/corporate/news/business-finance/2022/20220830-001/
2.トウモロコシ
日本のトウモロコシと比べて実は白っぽく甘みが少ないものが主流で、現地ではメイズとも呼ばれています。
食べ方はこちらもキャッサバと同様、茹でたり、焼いたり、粉にして水と混ぜて蒸して蒸しパンのようにして食べます(これも同様に「ウガリ」「シマ」と呼ばれています)。また、メイズの粉とウガリの倍ほどの分量の水を加えて煮た「ポリッジ」も食べられます(こちらは飲み物に近い感覚です)。
実は、アフリカで親しまれている「ウガリ」「シマ」は、家庭によって水の配合や練り方など作り方が異なるため、現地の人々は「家庭の味」があるといいます。仲良くなった現地のお母さん方から、「我が家の美味しいウガリ(シマ)の作り方を教えてあげよう」と声を掛けられることもあります。
3.コメ
日本人に最も馴染み深いコメも、アフリカ各国で生産され食べられています。コメの生産量も穀物・イモ類の中で4位と上位です。アフリカ大陸の穀物・イモ類生産量TOP10
現地の人々が買い物をするマーケットにも様々なコメが並んでいます。アフリカ各国だけではなく中東や東南アジアのコメも並んでおり、世界各国のコメを食べ比べることが出来ます。
調理方法は日本と同じように水から炊きますが、塩を入れたり指し水をしたりと若干異なり、コメの炊き方が厳密な日本人からすると少し驚きもあるかもしれません。香辛料を入れたサフランライス風の調理も見られます。日本のご飯よりは少しパサパサしていますが、汁気の多いおかずとよく合います。
実は、アフリカでコメが広がったのは比較的近年になってからです。きっかけは2007~2008年の世界食糧危機で、多くの食料を輸入に頼っていたアフリカ諸国では食料増産が急務となり、調理のしやすさと日持ちのしやすさからコメ消費が急拡大しました。
そこでコメを増産し食料需給を改善するため、アフリカ稲作振興のための共同体(Coalition for African Rice Development:CARD)という国際イニシアティブが立ち上げられました(※1)。現在、計32カ国の対象国を支援するプロジェクトが進行中です。日本もJICA(独立行政法人国際協力機構)がこの運営機関の一つとなって貢献しており、アフリカでのコメの生産量向上を目指してネリカ米(NERICA:New Rice for Africa)(※2)の品種開発・普及など様々な支援をしています。
※1アフリカ稲作振興のための共同体(Coalition for African Rice Development:CARD):サブサハラ・アフリカのコメの生産量を倍増させることを目標に、2008年のTICAD IVでJICAが国際NGOのアフリカ緑の革命のための同盟(AGRA)と共同で立ち上げた国際イニシアティブ。https://www.jica.go.jp/activities/issues/agricul/approach/card.html
※2:ネリカ(New Rice for Africa:NERICA);高収量のアジアイネと病気や雑草に強いアフリカ稲を交配することによって出来上がった品種の総称。アフリカ稲センター(Africa Rice Center(旧West Africa Rice Development Association:WARDA))が、1992年にアジア稲とアフリカ稲の種間交雑に初めて成功し、現在は水稲60種、陸稲18種が登録されている。日本は、1996年以降、JIRCAS、JICAから研究者、専門家を派遣し、品種開発・普及を支援してきた。
https://www.jica.go.jp/activities/issues/agricul/approach/nerica.html
次回は、アフリカ料理などエスニック料理が食べられる食堂と、3品目の栽培に適した気候・場所についてお伝えします。
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■参考文献
アジア経済研究所-第8章 東南部アフリカ諸国におけるトウモロコシ(『「食糧危機」と途上国におけるトウモロコシの需要と供給』調査研究報告書)
花王株式会社-キャッサバ残渣をバイオマスとして利活用する製造モデルの調査をNEDO委託事業として開始
独立行政法人農畜産業振興機構-野菜(でん粉)
農林水産政策研究所-第5章アフリカ―コメの需要と関連政策-「主要国農業戦略横断・総合」第8号
熱帯農業研究-アフリカにおけるネリカ米栽培技術の確立と技術普及
Peel, M. C., et al- Updated world map of the Koppen-Geiger climate classification
FAO-Nigeria at a glance
JICA-アフリカ稲作振興のための共同体(CARD)
JICA-ネリカ(NERICA)
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