アフリカは可能性の宝庫。アフリカでの事業は挑戦の象徴。

2020/06/11
ロート製薬株式会社 阿子島文子様

ANZAでは、JICAの青年海外協力隊帰任後にロート製薬でアフリカ事業を開拓した阿子島文子氏に、ご自身のアフリカでのビジネスのご経験と想いについてお話を伺いました。

ロート製薬のアフリカ進出についてはこちらからご覧いただけます。


―まず初めに、阿子島さんがアフリカへ行くことになったきっかけを教えてください。

きっかけは青年海外協力隊で、ケニアに赴任したことです。当時、アジアはバックパッカーで回ったことがあったのですが、アフリカは訪れたことがありませんでした。アフリカを理解したいと考えたときに、青年海外協力隊の存在を知りました。協力隊として、アフリカで実際に生活をしながら現地の人と一緒に働くことで、自分の中で漠然としていて具体的なイメージが湧かなかったアフリカという地を理解し、現地の開発に貢献したいと思いました。

昔から人の「健康」に寄与したいという思いがあり、大学卒業後は、国内の製薬会社(ロート製薬とは別の会社)に勤めました。勤めてから4年後に以前から関心のあった国際協力の道に進みたいと思い、会社を退職して、アフリカ保健分野における大きな課題であるHIV/エイズの案件に応募することにしました。ご縁があって、2009年~2011年の2年間、ケニアで活動することになりました。


―協力隊としての派遣が初めてのアフリカだったのですね。任地ではどのような活動・生活をされていたのでしょうか。

ケニアの西部ビクトリア湖湖畔の漁師町にある保健事務所に赴任し、HIV/エイズ予防啓発活動を行っていました。地域の女性グループ、漁師組合、受刑者等に対して予防啓発プログラムの実施、性産業従事者を対象にその他の収入源獲得のための収入向上活動、地域の連携体制を構築するための保健分野官民ステークホルダーマッピング、町全体の啓発イベントの企画運営などです。

笛をもって夜の市場に行き、パトロールをしたこともあります。(笑)

啓発活動の様子
企画したエイズ啓発イベントでのパフォーマンス


生活面では、当時、地方の村では電気や無線インターネット回線がとても不安定だったのでパソコン作業ができない日も多々ありました。停電でも急ぎの仕事がある時には、発電機のあるホテルや事務所を回ってコンセントを貸してもらったり、有線のインターネット接続が可能なトタン小屋のネットカフェをはしごしたりなど何かと村中の人に助けてもらっていたことが印象に残っています。

一方で、2011年あたりから地方の村のいわゆる中間層である役所の人達がシンプルなスマートフォンを持ち始めており、漁業や農業が中心の地方でもテクノロジーによりもたらされる生活の変化を見ることができたのは貴重な経験でした。その浸透と変化のスピードは日本以上に早かったように思います。


―実際に活動や生活をしてみて、想像していたものとのギャップはありましたか。

「アフリカはこういうものだ。」という固定概念があまりなかったので、カルチャーショックのようなものはあまりなく、目の前で起きていることをそのまま吸収していたと思います。

ただ、考え方の違いを感じることは多々ありましたね。

例えば、医療における考え方の違いです。現地の人々の生活において呪術師が非常に重要な存在であり、日常生活における振る舞いや病気の原因の理解と対処にも大きな影響力を持っていました。伝統的な考えと西洋医学や科学との交わりによる人々の考え方の変化は興味深いものでした。一方で私たちも、神社でおみくじを引くなど日常生活の中で一種のまじないや願掛けのようなことをしますし、表面的に違えど、人間の根幹は一緒かもしれないとも思っています。


―協力隊としての活動後、ロート製薬に入社するきっかけは何だったのでしょうか。

大きな理由は、2年間の活動を通じて、健康産業が社会に与えるインパクトは非常に大きく、「医療、健康」分野におけるビジネスを通じて社会に貢献していきたいという思いを再認識したからです。

貧困層はまだまだ多いものの、中間層の拡大に伴う消費活動の増加や消費に裏付けられる雇用拡大等を垣間見るとともに、欧米諸国や中国等アジア各国のアフリカに対する民間投資の勢いを感じ、ビジネスを通じてアフリカにおける日本のプレゼンスをさらに高めていく必要性を感じました。現地のパッションやパワーをしっかりとビジネスに繋ぎ、持続可能的に共に成長していける関係構築に挑戦したいという想いから、インドやバングラデシュなど世界の健康に果敢に挑戦しているロート製薬への就職を決めました。


―阿子島さんのように、協力隊後にアフリカ事業を行っていない会社に入社し、アフリカ事業開始のきっかけになる例は非常に少ないと思います。

多くの協力隊経験者が社会の中で様々な活躍をしていますが、民間企業における海外事業、特に精神的に距離感のあるアフリカとの事業にこそ、現場を知る人材として、活躍可能性をさらに広げてほしいと思います。


―御社でのアフリカ事業を開始するまで、周囲の人をどのように巻き込んでいきましたか。

まずは、アフリカのことを知ってもらう努力をしました。具体的なイメージを持ってもらうために、現地の感覚を大切にしながら状況を細かく伝えていました。

アフリカの魅力を伝える動画を作成し、朝礼時に流させてもらったこともあります。

少しずつアフリカのことを知ってもらい、理解してくれる人を増やし、入社から約1年半後、2013年5月にケニア現地法人を設立しました。


―たったの1年半で実際に現地法人を設立したのですね。設立後は阿子島さんが現場を
担当されたのでしょうか。

私は2013年7月頃に現地に渡り、2018年まで約5年半、現地の代表として駐在していました。

ロート製薬では、「一人ひとりの情熱が起点」という価値観が浸透しています。スキルや経験よりもパッションのある人が中心になり挑戦をしていく会社です。そういう会社だからこそ、このようなスピード感で進められたのではないかと感じています。

一方、現地法人を設立すること以上に、現地の人を雇用すること、新たな産業を創っていくことが大切だと考えていたので、形だけでなく、実際に現地の人と協力して事業を進めていくことを大切にしていました。

インフルエンサーイベントにて


―協力隊でケニアに滞在していた時と比較して、現地の状況に変化はありましたか。

変化していたところも変化していないところもありましたね。

変化としては技術面で、海外からの投資はより活発になり、スマートフォンや現地の課題解決に繋がるアプリサービスなど新しいものが外部から次々に入ってきていました。

ケニアの特に都市部の人は新しいものが入ってくることに嫌悪感がなく、新しいものを自分たちの生活を向上させる可能性があるものとポジティブに捉えている人が多いです。もちろん雇用が脅かされるなどの危機感には抵抗や抗議は強いですが。この前向きな姿勢に私自身非常に刺激を受けました。

一方で変化していなかったものは、感覚や人との繋がり、常識などです。

50年前にケニアを訪れた方も同じことを仰っていたので、彼らのオリジンに関連するところは変わらないのかもしれません。

ケニアでは英語を話せる人が非常に多いのですが、公用語であるスワヒリ語や母語(民族の言葉)でしか表現できないニュアンスも多々あり、ケニア人同士の会話でも上手くミックスしながら会話をしています。また、同郷や民族、血の繋がりには独特の思い入れがあると感じます。

このような、彼らの感覚を理解しようとすることは、現地の生活における人間関係においても事務所のマネジメントにおいても意識して行っていました。


―現地スタッフの雇用の際に気を付けていたことは何でしょうか。

「相手の考えや意見を理解はするものの、だからといって全てを受け入れることはしない。」ことです。

ケニアの常識という理由だけでそのまま受け入れたり日本の常識をただ説明するのではなく、目的達成のために必要であるなど背景を含めて説明し理解してもらったうえで、事務所内のルールや決まり事を作ることを行っていました。とにかく一方通行にならないよう互いの考えを尊重したうえで相互理解に努めるということを大事にしていました。


―協力隊も含めて長期でケニアに滞在されていたと思うのですが、日本企業の進出は増えていますか。

ケニアでTICADⅥが開催されたあたり(2016年)から少しずつ増えている印象ですが、他の地域と比較すると数はまだまだ少ないと思います。

時間を使って綿密な調査を行う企業が多いですが、実際に事業を行うことで初めて分かることや新たな出会いがあるため、とにかく小さくてもパイロット事業を実行してみることが大切だと思います。


―「習うより慣れよ」ということですね。
― ケニアから帰任されて、思うことを教えてください。

アフリカで新規事業を立ち上げた経験は、大きな糧になりました。僭越ですが、たまに会社の後輩たちが、アフリカ事業に関心を持ちロート製薬に入社したと言ってくれることがあり、挑戦を続けるロート製薬として理念を具現化した一つの事例になったのかもしれません。

「他の企業が二の足を踏むアフリカにおいて、フロンティア企業になる。」と新しいことに挑戦する文化を社内に醸成し、若手社員を中心に少しでも良い影響を与えられていたとしたら、とても嬉しいと思います。

一方で、アフリカは夢の大陸ではないということも痛感しました。

当然市場のリスクは存在するので、きちんとリスクを理解して進めていく必要性があります。私としては、そのリスクを理解するうえで重要なことは、現地に敬意を払うことだと思います。

私自身にもあることなので自戒も込めて言いますが、よくアフリカ市場でのビジネスは昔のアジア市場への進出の成功体験の焼き増しだと考えることがあります。

もちろん、マクロ経済指標などを見ていく中で共通するトレンドはありますが、時代やデジタルなど技術的環境も異なりますし、国民性や国柄は全くと言っていいほど違うこともあります。現地への敬意が欠けると事業を進めるうえで大事な要素を見逃しかねないと思います。自ら足を運び、顧客やステークホルダーの意見に耳を傾けることで、市場のリアル(現状)に沿ったビジネスを行うことができると思います。


―現在の阿子島さんのお仕事を教えてください。

現在は、出向先であるアライアンス・フォーラム財団で途上国事業部門の仕事を担い、同時にロート製薬の広報・CSV推進部と二つの仕事をしています。すべてがアフリカの事業に関わっているわけではないのですが、アフリカ関連のお仕事もしています。


―今後の目標を教えてください。

「困っている人の役に立ちたい。」これは、私が幼い頃から抱いている想いです。そのために、今自分ができる最大限の努力で、周りの人や社会、未来のために少しでも貢献したいと思います。

現在は日本で子育てをしながら仕事をしていますが、途上国だけでなく、国内の課題も感じ、取り組みたいことも出てきました。女性特有の社会課題、チャレンジを持つ子供の療育などの分野にも関心を持っています。

もちろん、アフリカは自分の故郷のような愛着があり、アフリカに生きる人を幸せにするサービス・商品・技術への模索を続けたいと思っています。引き続き日本でもアフリカと連携しながら、自分が貢献できることを実践していきたいと思います。


―最後に、今後アフリカ進出を目指す企業や人に向けたメッセージをお願いします。

アフリカは社会課題の宝庫ですが、それは裏を返せば可能性の宝庫ということです。

もちろん障壁はあるものの、足りないものや必要なものが次々に見つかり、どんどん挑戦ができる場所です。社会に貢献しながらビジネスをして、さらに自身が成長できる一石三鳥の場所だと思います。

人生において何かを成し遂げたい人にはもってこいの地だと思うので、皆さんぜひ挑戦してみてください。

やりがいがありすぎて、婚期は逃すかもしれませんが・・・(笑)

また、中国、欧米、東南アジアなどからの投資や進出も加速しており、アフリカ市場は今から見ていかないと乗り遅れてしまいます。

アフリカの日々の成長を感じ、現場の声を聞きながら、実際に手足を動かして何かしてみることが大切だと思います。


―阿子島さん、本日は貴重なお話ありがとうございました!

阿子島さんのアフリカ市場に取り組みたいという情熱とそれを受け入れるロート製薬の文化の二つが交わったことで成し遂げられたアフリカ進出。阿子島さんの現地に敬意を払う姿勢が非常に印象的でした。

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