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2020年7月に発行されたばかり、田島隆雄著の「情熱のアフリカ大陸―サラヤ『消毒剤普及プロジェクト』の全記録―」です。
書籍概要
本書は、ハンドソープやアルコール消毒剤などの手指衛生製品の製造・販売するサラヤ株式会社(以下サラヤ)のウガンダでの事業展開に関する物語です。
サラヤは1952年に大阪で創業し、日本の子どもたちを赤痢から守ろうと薬用手洗い石鹸の販売を開始し、手洗いの習慣を普及させたり、その後、1970年代には人体や環境への負荷の少ない素材を使った洗剤の開発するなど、日本社会において先進的な商品を投入し人々の行動変容を促してきた会社です。
本書はその同社が2000年代初期、新しい世紀を向かえる中で、日本だけでなく世界の子どもたちを救うべく、アフリカのウガンダに事業進出をする過程を描いた物語です。
サラヤが初めてウガンダを訪れた2010年の5歳未満児死亡率は1,000人中99人だったものの、6年後、その数値は53人にまで低下しました。サラヤの活動は確実にウガンダの衛生環境の改善に役立っています。
同社がウガンダにて歩んできた道のりは決して平坦なものではありませんでした。
商習慣や文化の違いに戸惑いながらも、目の前にある悲劇を食い止めようと必死に奮闘を続けたサラヤの11年間の物語が本書には記録されています。
新興国での新規事業立ち上げに興味のある人には現地駐在員の奮闘が、国際協力に興味のある人には現地での交流が、社会貢献に興味のある人にはビジネスとの葛藤が、保健衛生に興味がある人には業界の現実が、それぞれの視点から読める一冊となっています。
書籍要約
初めてのアフリカで気づいたこと
当初、更家社長は、「アフリカでも日本のように小学校に手洗い設備を設置するのが一番だ。サラヤがそのお金を寄付してもいい。」と考えていました。しかし、視察を通じて、モノを寄付するだけでは何も変わらない。人々の意識そのものが変わらなければ、善意の押し売りで終わってしまう。現地の役に立つ支援活動を行うならば、普及啓発という地道な教育支援が必要だと気が付くのでした。
かつて、途上国への支援は食物だったり衣服だったり薬品だったり、「モノをあげるだけ」が中心でした。しかし、消耗品をいくらもらっても、使い切ってしまえばそれで終わりです。永遠に寄付を受け続けることができれば話は別ですが、そんなことは寄付をする側もされる側も望んではいません。
更家社長が初めてのアフリカの渡航で気がついたのは、支援を受ける側に必要なのは自立、つまり自分たちの生活を自分たちで成り立たせていくことだということです。
視察を終えて、更家社長は以下のような発言をしています。
「地球の片側に日本という国があって、もう片側にウガンダがあって、お互いが地球市民として一緒に生きていけるような、そんなお手伝いが出来たらいいと思います。子どもたちの笑顔を見ていると、この素晴らしい笑顔を未来に繋げていきたい、そんな気持ちに自然となりました。そして、戦後の日本で衛生環境を改善したサラヤの次の使命として、世界の衛生環境を改善していこうと、改めて強く思いました。」
アフリカで立ちはだかった困難
①費用
アフリカなど新興国でビジネスを検討する場合、マクロの経済指標だけに目を向けて、「アフリカは物価が安くて人件費も安いはずだ」と思い込みがあると、それが実際のビジネスを行う時に大きな落とし穴となる場合があります。
1つの例が「平均値」です。例えば所得水準はアフリカ各国は平均値として低く出ることはありますが、母集団を見ていくと上位と下位で大きなバラつきがあったりします。
物価に目を向けると、都市部の物価は日本の水準と変わらない、物によっては日本よりも高いこともあります。自国の産業が育っておらず、輸入品が多いことから物価はグローバル価格と変わりなく、もっと言えば輸送費の分だけ高くなります。
人件費も同じで例えば弁護士、会計士、税理士などプロフェッショナルの職種で、グローバルスタンダードの水準のサービスを求めると価格も当然グローバルな水準となります。その国において絶対数が少なくなると、さらに価格が上がることも多くあります。
単純労働者についても、給与のコストだけでなく、求めるアウトプットを出すための職能に引き上げるための教育・研修のコストも必要になる場合があり、結果的に当初の想定より高くなることがあります。
同書では、ウガンダでの消毒剤の工場建設を担当した宮本氏の実体験に基づき、上記のような費用面での苦労・困難が記されています。
②異文化理解
工場建設時は、建設のスケジュールは常に遅れていたそうです。
「遅れています。すみません。でも、それがアフリカなんです。」といつも本社に言い訳せざるを得なかった。何が起こったかを語ることはできるものの、どうしてそうなったかを説明することは難しい。
と宮本氏は語っています。
アフリカでは、約束した時間通りに来てもらえないこと、頼んだ仕事が期限までに終わらないことは頻繁に発生します。
日本の場合は違約金や罰金になるのかもしれませんが、アフリカでそんなことを言っても誰も払わないし、怒っても事態は改善しません。
物事を前に進めるためには、怒らずに折れない心で根気強くお願いを繰り返す必要があるのです。
同書では、サラヤの現地駐在員がアフリカで体感した異文化理解の難しさについて、以下のように述べられています。
アフリカにはアフリカのルールがあって、それがアフリカでは合理的です。アフリカ駐在のビジネスマンはよく、『それがアフリカだ(This is Africa)』と言いますが、これは上から目線でアフリカを笑うものではなく、本来は異文化理解の難しさを表現したものなのです。
アフリカビジネスの面白さ
①新しい習慣、文化を作る
日々やってくる上記のような困難を一つ一つ乗り越えながら、サラヤのアルコール消毒剤は徐々にウガンダでの地位を獲得していきます。ウガンダ国内の病院の中には、アルコール消毒を「サラヤ」と呼ぶようになったところもあるそうです。
アルコール消毒剤といえばサラヤ製品しか知らないスタッフも多く、alcohol disinfectantとかhand hygieneの長ったらしい語感より、サラヤの言いやすさが好まれました。
はじめは「SARAYAある?」「SARAYA使った?」「SARAYA補充した?」などとアルコール消毒剤の代名詞として使われていましたが、そのうち、「SARAYAした?」と、動詞のように使われるようになりました。
未開拓のいわゆるブルーオーシャンの市場において、製品やサービスのプレゼンスが大きくなり、社会における新しい習慣となるとこのようなことが起こります。
インターネットで検索することを”google”、紙に印刷をすることを”zerox”というように、グローバルレベルでこのような現象は起きますが、アフリカ市場では特にブルーオーシャン市場は大きく、新たな製品やサービスがその国での新しい文化や習慣として定着するという可能性は他の地域に比べて高いと言えるかと思います。
②日本では気づかなかった価値観を得る
本書にて、サラヤの現地駐在員の一人は、
「日本の生産性は本当に高いのでしょうか?私は、日本での社会人時代に、かなりの残業時間を自己満足と上司のためともいえる作業に使っていたと思います。あの作業の全てがエンドユーザーの役に立っていたとは思いません。作業から学んだことも多かったですが、あの作業を続けたいとは思いません。私はアフリカから学んだことがたくさんあります。」
と語ります。
日本と文化や習慣が大きく異なるアフリカに身を置いて、仕事や生活をしていると自分のこれまでの「当たり前」に改めて光が当たり見直し、学ぶ機会が頻繁に訪れます。これもアフリカビジネスの魅力の1つと言えるかもしれません。
ビジネスのノウハウだけでなく、サラヤの社員の方がウガンダに駐在し現場での様子も等身大で記されている本書は、ビジネスに必要なのは「情熱」という言葉で締めくくられており、多くの人を元気づける一冊となっています。
コロナ禍で海外渡航が厳しい今だからこそ、「現場感」が内容に多く盛り込まれている本書はぜひおすすめしたい一冊です。
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書籍情報
書籍名:情熱のアフリカ大陸―サラヤ「消毒剤普及プロジェクト」の全記録―
著者:田島隆雄
出版年:2020年
発行所:幻冬舎
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