年々、アフリカスタートアップ界隈の盛り上がりが、勢いを増しています。
アメリカの投資会社、Partechの調査によると、2020年は、アフリカのテック企業全体で、14億3,000万米ドルの資金調達を実施したと言われています。市場は前年から29%減少し、10年間右肩上がりの成長を遂げていた中、新型コロナウイルスの世界的な影響ではじめて前年を下回りました。
一方で2020年には、スタートアップの投資案件数が過去最高を記録しました。2019年の250ラウンドと比較して、347社のスタートアップが359件の投資案件を成立させ、前年比で44%の増加に至りました。
今回は、アフリカのユニコーン企業8社を見ていきたいと思います。
(この記事における「アフリカのユニコーン企業」の定義は非上場、アフリカでオペレーションを取る、企業価値10億ドル以上であるとします。)
① ナイジェリアデジタル決済ユニコーン、『Interswitch』
1社目のアフリカのユニコーン、Interswitch(インタースイッチ)は2002年にMitchell Elegbe氏によって設立されたナイジェリア発のユニコーンです。同社は、ナイジェリアで最も使用されている支払いカード「Verve」の発行元であり、国内で流通している2,500万枚のカードの70%以上を占めると言われています。
Interswitchは、2019年11月に米VISAに株式20%を2億米ドルで売却し、ユニコーン企業になりました。同社はユニコーンから2020年までにIPOを完了する計画がありましたが、新型コロナウイルスの世界的な流行とその他の経済問題があったことで会社の計画を変更せざるを得ない状況となりました。
CEOの最近の声明によると、直近でIPOを目指すことはないとされていますが、2020年2月にナイジェリア証券取引所(NSE)に2,300万ナイラ(650万円)の債券を上場すると発表しました。この債券は15%の固定金利で7年間有効です。
② 2021年最初のユニコーン『Flutterwave』
2社目のアフリカのユニコーン、Flutterwave(フラッターウェーヴ)は2016年にOlugbenga Agboola氏によって設立されたアメリカ発のユニコーンです。同社は銀行や中小企業に国を超えて利用可能なAPIの決済システムを提供しています。
Flutterwaveはこれまで2018年10月にシリーズAで2,000万ドル、2020年1月のシリーズBで4,000万ドルを資金調達しており、この度2021年3月の1億7,000万ドルのシリーズC資金調達を行ったことでユニコーンとなりました。
関連記事:ナイジェリアのフィンテック、Flutterwaveが記録的な資金調達額でユニコーン企業入りを果たす
③ 米発スタートアップ、ドローンで医療用血液を輸送、『Zipline』
2014年にアメリカで設立されたZipline(ジップライン)は、2018年6月に事業会社として初めて豊田通商がシリーズCの資金調達ラウンドに出資参画したことで、日本でも話題になりました。2019年も新たに1億9,000ドルの資金調達を実施し、ユニコーン企業の仲間入りを果たしました。
Ziplineはアメリカ以外にもアフリカの特にルワンダにおいて全国血液供給量の75%を供給しており、今後5年間で7億人にサービスを提供することを目標にしています。
そのためにもアフリカ、南北アメリカ、南アジア、東南アジアにサービスを拡大すると発表しています。
さらに2021年2月には新型コロナウイルスワクチンを、世界のあらゆる場所で提供することを計画しており、既に今年6月にはガーナの農村地域で実証を開始しています。
関連記事:ドローン物流で過疎地や離島に医療品を、豊田通商とZiplineが戦略業務提携を結ぶ
④ エジプト初のユニコーン『Fawry』
4社目は、2009年に設立されたエジプト発ユニコーンのFawry(ファウリー)です。同社はエジプトにおけるデジタルトランスフォーメーションと電子決済プラットフォームのリーディングカンパニーです。
現在、225,000以上の拠点と様々なチャネルを通じて消費者や企業に金融サービスを提供しています。パンデミック後、多くの人が電子決済サービスに切り替えたため、エジプト最大の電子決済企業のFawryのアクティブユーザー数は2020年上半期に32.9%増加し、月間ベースで2,900万ユーザーを超えました。
⑤ 記録破りのユニコーン『OPay』
2021年8月にOPay(オーペイ)はアフリカ由来のスタートアップ史上最高額の4億ドルもの資金調達を行い、アフリカ史上最速でユニコーンとなりました。そしてこのシリーズCの資金調達ラウンドでは、ソフトバンクビジョンファンドが主導したことも話題となりました。
2018年12月にナイジェリアでフィンテックのサービスを開始したOPayは、2020年5月時点で30万人ものユーザーを抱え、毎月30億ドルのトランザクション処理をしており、今後はアフリカと中東へのサービス拡大を狙っています。
関連記事:ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)の主導で、OPayが4億ドルの資金調達に成功
⑥ セネガルでモバイルマネー、『Wave』
Wave(ウェーヴ)はセネガルでモバイルマネーサービスを行うユニコーン企業です。2018年にサービスを開始して以来、わずか2年の速さでセネガルで最も利用されるモバイルマネーになりました。
同社のモバイルマネーはMpesaや携帯キャリアが提供するモバイルマネーとは2点、大きな違いがあります。1つは入出金手数料が無料で送金の際も1%の手数料しかかからないということで、従来のモバイルマネープロバイダーと比較しても70%も安く利用することができます。
またもう1つの違いはスマートフォンアプリを利用して、サービスを行なっている点です。従来のモバイルマネーはUSSDを利用するタイプがほとんどの中、よりスマートフォンユーザーが利用しやすい形になっています。
さらにWaveの共同創設者はSendwaveというデジタル送金サービス企業の立ち上げを既に行なっており、その経験と実績がベンチャーキャピタルからの信頼獲得と、ユーザーに受け入れられるモバイルマネーを支えているのではないでしょうか。
今後はさらにコートジボワールでのサービスにも力を入れていくようです。
関連記事:2021年3社目のユニコーンはまたしてもフィンテック、Wave社
⑦ 西アフリカ3社目のユニコーン、『Andela』
Andela(アンデラ)は新興市場のエンジニアを世界中の企業とマッチングさせるサービスを行っているスタートアップです。アフリカではソフトウェア開発者とエンジニアの人材が不足している問題がありました。そこでAndelaは技術的スキルとソフトスキルを評価することでエンジニアと企業の適切なマッチングを行うソリューションを提供しています。
現在ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)が主導するシリーズEの資金調達ラウンドで2億ドルを調達した後、評価額が15億ドルとなっているなど今後も一層のサービスの拡大を行う予定となっています。
⑧ ヘルスケアのリープフロッグを推進、『Babylon』
最後に紹介するBabylon(バビィロン)は、人工知能を活用したAIドクターの実現を目指す英国発のユニコーンで、2019年8月に5億5,000万ドルの資金調達を実施したことによりユニコーン企業の仲間入りを果たしました。
同社は2020年にデジタルヘルスサービスの「Babyl」をルワンダ政府と10年間の契約を締結することにより提供し始めました。初期段階で急速な進化を遂げたバビロンの技術には信頼性の面での懸念が数回浮上したことがありましたが、ソフトウェアは十分な臨床試験を経ていることなどを説明し、勢いを落とすことなく事業を成長させています。
また今年には、SPACでニューヨーク証券取引所に上場したことでも話題になっています。
最後に挙げたBabylonのように既存インフラ、既得権益者、岩盤規制といったレガシーの少ない、アフリカだから実現できるソリューションを持ったユニコーン企業にはこれからも注目です。
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《参照》
2021年11月10日閲覧
「Interswitch: The story of one of Africa’s earliest unicorn companies」
「Flutterwave becomes a unicorn, raises $170m at over $1 billion valuation • Techpoint Africa」
「UK healthtech giant Babylon Health to go public in US via SPAC」
「$1.5bn Andela becomes West Africa’s 3rd unicorn this year」
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